医学界新聞

寄稿 染小 英弘

2021.10.11 週刊医学界新聞(レジデント号):第3440号より

 2020年1月に端を発した本邦でのCOVID-19パンデミック,通称コロナ禍により,われわれ医療者を取り巻く環境は一変した。臨床現場での変化が取り沙汰されがちではあるが,研修病院においては,次年度の研修医を採用する際に行う面接試験をどのように実施するかも課題となった。さまざまな感染対策を施して例年通り対面で実施する病院も少なくなかったが,当院では全国各地から志望者が集まること,またオンラインでのセミナー開催経験が豊富であり,いわゆるWeb会議への障壁が少なくなっていたことから2021年度の採用に当たっては全面的にオンラインでの実施とした。

 小生の知る限り,本邦でオンライン面接を実施していた研修病院はコロナ禍以前では皆無だった。一方米国では,国土の広大さゆえ志望者は時に飛行機で何時間もかかる距離を移動しなければならず,時間的,経済的コストの節約などのため,コロナ禍以前よりレジデントの募集にオンライン面接を使用することが散見された。例えばVadiらは自学の麻酔科レジデンシーへの応募者に,対面あるいはオンラインのいずれかを選択できるようにして面接を課し,その後アンケートを行った。結果,多少トラブルがあったとはいえオンライン面接を選択した者も面接に満足していたと報告している1)

 その後米国でも始まったコロナ禍において,オンライン面接を実施するプログラムが増え,その知見が集積されているが,オンライン面接に好意的でない報告も見られる。Bambaらは自学の形成外科プログラムの応募者に,コロナ禍の前後で状況に応じ対面あるいはオンラインで面接を課したが,いずれを受験した者も,そのほとんどは対面での面接を好んだとしている2)

 そこで当院では,2022年度以降もオンライン面接を施行する可能性を考慮し,2021年度の志望者に対してアンケートを実施。受験者96人中70人,面接官24人全員から回答を得て,その知見をまとめた3)。当院の面接では主に受験者の論理的思考力(能力),研修への熱意,人柄をみるようにしている。受験者の回答ではいずれの項目も対面がアピールしやすいとする意見が優勢であったものの,差がないという意見の者も少なからずいた。一方の面接官は,評価においては差がないとする意見が支配的であった。

 対面で接しなければ結局相手のことはわからない,と考える向きは少なくあるまい。しかしよくよく考えてみると,対面で接する時であっても状況に応じて人間は対応を変えるし,周囲の環境によっても印象は左右される。例えば,病棟で真面目に働いている研修医と何かの機会で宴席を共にすると,全く違う一面に気付かされるということは誰しも経験があることではなかろうか(無論コロナ禍以前の話である)。

 面接という限られた時間の中では,対面であっても相手のことを完全に理解するのは容易ではない。対面でのコミュニケーションはオンラインに比べれば制約は少ないかもしれないが,存在することは事実であり,オンラインツールに習熟すればその差は縮まっていくと思われる。時間や場所を選びにくいという対面に比しての利点もあり,いずれかを選択できるようにするというのが両者のメリットを享受する道であろう。

 コロナ禍が始まって以降は学会や勉強会もオンラインで行われる機会が増えてきた。面接のみならず,コロナ禍収束以後もオンラインの形式はその利便性から残っていくと推測する。オンラインコミュニケーションへの習熟は今後医師にとって重要なスキルになるのではないか。


1)Int J Med Educ. 2016[PMID:27039029]
2)J Surg Educ. 2021[PMID:32958417]
3)染小英弘,他.COVID-19パンデミック下での初期研修医採用試験におけるオンライン面接の意義.医教育.2021;52(3):193-201.

3440_2_01.jpg

国保旭中央病院総合診療内科 医長/臨床教育センター副センター長

2009年東北大医学部卒。みさと健和病院で初期研修,同院総合診療科で3年間の後期研修の後,北里大医学部神経内科学助教,同大メディカルセンター神経内科医長を経て19年より現職。神経内科をサブスペシャルティに持つ病院総合診療医として臨床業務に従事している。総合内科専門医,神経内科専門医。