医学界新聞


第25回日本看護管理学会学術集会の話題から

取材記事

2021.09.27 週刊医学界新聞(看護号):第3438号より

 第25回日本看護管理学会学術集会(会長=横市大・叶谷由佳氏)が2021年8月28~29日,「持続可能な社会をリードする創造的看護管理」をテーマに,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)の会場およびオンライン配信のハイブリッド形式で開催された。本紙で紹介するパネルディスカッション「持続可能な効果的かつ効率的な看護サービス提供体制の在り方」(座長=関東学院大・金井Pak雅子氏,東京医歯大・柏木聖代氏)では,日看協常任理事と3病院の看護部長がパネリストとして,持続可能な看護サービス提供体制の取り組みを紹介した。

◆看護師が最大限の力を発揮できる環境を作ろう

 日看協で医療制度・看護管理等を担当している吉川久美子氏は,急性期病院の看護職員配置に着目した。診療報酬改定の経過を振り返り,2006年度に創設された「7対1入院基本料」がエビデンスを基に検討されたものではないと説明。重症度の高い患者を多く受け入れている病棟では特に,基準を上回る配置が必要となる場合もあると主張した。より適切な配置基準を吟味するため,日看協は20年度に検討委員会を設置。データベースの分析や病院へのヒアリングを行った結果,5対1や6対1といった基準以上の手厚い配置を必要とする病棟が一定割合存在すること,看護職員の加配が病院全体の医療の質や患者満足度の向上に寄与する可能性があることが明らかになったという。「エビデンス構築のため,引き続き人員配置に関する調査を継続する。管理者の皆さんにはぜひご協力いただきたい」と呼び掛けた。

 「持続可能な看護サービスを提供するためには,主体性・創造性・科学性を重視した“考える”看護師の育成が重要である」。こう主張した淺香えみ子氏(東京医歯大病院)は,看護における持続可能性を「変わりゆく社会の中で,看護提供体制を適正に維持・発展すること」と定義し,コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ考察した。新型コロナに対応する中で氏は,増員や施設構造の改善といったシステム整備だけでは業務の効率が上がらないと気付き,この課題を普遍的なものととらえたという。看護を持続するためには,スタッフ一人ひとりが現状の課題を考え,状況に応じた効果的・効率的な看護を考え実践する姿勢が欠かせないと強調した。“考える”ことができる看護師は,管理者によるスタッフの提案全てを尊重する風土の構築,考える機会や場の提供,開かれた組織運営などによって育成されるとの見解を示した。

 看護師が専門性を最大限発揮するにはどうすればいいのか。この問いに対して,宮下恵里氏(済生会熊本病院)は①勤務体制,②ケアの質,③教育体制の3つの側面から答えを探った。①勤務体制の一例として氏は,自身の病院で構築している緊急内視鏡対応の体制を紹介した。従来夜間は待機態勢としていた内視鏡室看護師に,消化器病棟と協働し一部夜勤体制を導入。結果,呼び出し回数と労働時間が減少し,治療の安全性も向上したという。②ケアの質としては,多職種せん妄対策・教育を目的とするDELTAプログラムの導入がせん妄誘発薬剤処方の減少につながったことを共有した。続いて③教育体制に関する取り組みとして,新人看護師・学生の指導・教育に専念する教育専従看護師(Eナース)の配置について報告。新人・正職員ともに離職率が低下傾向にあり,その効果を実感していると語った。

 安全・安心な看護サービス提供のためには,看護補助者の存在も欠かせない。赤間仁見氏が所属する菊名記念病院では,看護補助者の中でもベッド周りの清掃やリネンの管理に専従する「クリーンメイト」の登用を行っている。患者へのケアを担当する看護補助者とクリーンメイトとを区別することで,これまでケア業務に自信がなく応募を控えていた方々の採用が可能となり,人員不足が緩和したという。さらに看護補助者が常に病棟にいる状態が保たれ,看護師が病状説明や患者対応などの専門業務に専念しやすい環境が作られたと語った。「看護補助者が長く働き続けられるようキャリア支援や教育の機会を今後設けることができれば,看護業務を一層効率化できる」との期待を示した。