医師×鍼灸師で治療の幅を広げよう!
寄稿 寺澤 佳洋
2021.04.19 週刊医学界新聞(通常号):第3417号より
筆者は医師・はり師・きゅう師の3つの資格を持っている「医はき師」です。この呼称は「あはき師」という単語の言葉遊びなのですが,「あはき師」という言葉自体になじみのない医師も多いのではないでしょうか。
「あはき師」とは,あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師,それぞれの頭文字を組み合わせた呼称です。これらの3つの資格は全て別の国家資格で,専門学校や大学で3年以上の教育を受けた者にその受験資格が与えられます。カリキュラムにより複数の資格を一度に受験することも可能で,はり師・きゅう師の2つの国家資格を有する者を鍼灸師と呼びます(「はき師」とはあまり呼びません)。
同じ医学という範疇にありながら,大学医学部の講義であん摩マッサージ指圧(以下,あん摩)や鍼灸を学ぶ機会はほとんどありません。東洋医学の講義の中で年間数コマ学習できる程度でしょう。また,初期研修などで多職種連携を経験する機会も増えてきていますが,PT/OT/STや管理栄養士などと比較しても院内で「あはき師」が常勤している施設は少なく,接触する機会も限られています。実際,筆者が以前所属していた病院の医師たちに鍼灸師の知り合いの有無を伺ったところ,自身が治療を受けている場合を除いてほとんどいないようでした。こうした背景から,「あはき師」という名称およびその詳細な職務内容を知らない医師が多いのはごく自然なことです。
しかし,医師と「あはき師」が連携することで,西洋医学だけでは改善が見込まれなかった症状が改善するなど多くのメリットが期待されます。そこで本稿では,「あはき師」の中でも特に筆者が資格を有する「は」と「き」,すなわち鍼灸師と医師が連携する意義を考えてみます。
医師から受ける3つの鍼灸FAQ
鍼治療および灸治療は2000年以上前から行われている治療法で,整形外科的疾患のほか逆子,精神科疾患,感冒など幅広い症状に効果をもたらすとされています。鍼治療の発祥は中国ですが,現在ではアジアのみならず欧米でも広く実施されています。日本では,太さ0.15~0.35 mmと,注射針の3分の1程度の鍼を使用するのが主流です。治療時には,この鍼の先端を筋膜部や筋肉内などに留置したり,鍼を刺入せず皮膚表面に刺激を与えたりします。一方で灸は,ヨモギの葉を加工した艾を皮膚上に直接または間接的に置いて点火し温熱刺激を与える治療法です。
以下に,鍼灸の話をする際に筆者が医師からよく聞かれる3つの質問を紹介します。
◆鍼灸治療は効果があるのか?
これまで鍼灸に関するエビデンスは多くありませんでしたが,近年各大学で臨床研究が進められており,海外からも「鍼治療は,慢性の腰痛,緊張性頭痛,慢性頭痛,片頭痛の予防,および筋膜性疼痛の治療でmoderate benefitを提供し得る」と報告されている1)ように,その効果が認められつつあります。実際,慢性疼痛,線維筋痛症や慢性頭痛など,国内の各種ガイドラインにおいても鍼灸治療の効果について言及されています2, 3)。
また,鍼灸治療の効果は臨床上経験することもあります。筆者自身,鍼灸治療による腰痛の軽減を経験しました。まずは一度その効果を実感してもらいたいです。
◆鍼灸治療は安全なのか?
鍼灸は比較的安全な治療法です。はり師・きゅ...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

寺澤 佳洋(てらさわ・よしひろ)氏 弘池会口之津病院内科・総合診療科/鍼灸師
2003年明治鍼灸大(現・明治国際医療大)にてはり師・きゅう師の国家資格取得。その後東海大医学部に編入し,藤田医大総合診療プログラム指導医を経て20年7月より現職。現在「医はき師」12年目。総合内科専門医,家庭医療専門医,在宅医療専門医。地域医療に取り組むとともに医師と鍼灸師をつなぐため,セミナー開催のほかFacebookなどのSNSでも情報発信を行っている。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
対談・座談会 2025.03.11
最新の記事
-
対談・座談会 2025.04.08
-
対談・座談会 2025.04.08
-
腹痛診療アップデート
「急性腹症診療ガイドライン2025」をひもとく対談・座談会 2025.04.08
-
野木真将氏に聞く
国際水準の医師育成をめざす認証評価
ACGME-I認証を取得した亀田総合病院の歩みインタビュー 2025.04.08
-
能登半島地震による被災者の口腔への影響と,地域で連携した「食べる」支援の継続
寄稿 2025.04.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。