医学界新聞

新しい内科専門医制度でめざす

インタビュー 岡崎 仁昭

2021.03.29 週刊医学界新聞(通常号):第3414号より

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 2018年度から日本専門医機構主導で新専門医制度が開始された。それに伴い,内科領域では新しい内科専門医制度に移行し,2021年7月には初めての内科専門医資格認定試験(以下,内科専門医試験)が実施される。

 新しい内科専門医制度は,どのような内科医の養成をめざすのか。また試験に備えて専攻医はどう学習を進めるべきか。試験の将来的な在り方も見据え,日本内科学会資格認定試験委員会委員長を務める岡崎氏に話を聞いた。

――従来の内科専門医制度(認定医制度)では,卒後3年の研修で認定内科医を取得後に,内科サブスペシャルティ領域に進むことができました。一方の新しい内科専門医制度では,内科サブスペシャルティ領域専門医に進むには卒後5年の研修が内科専門医取得の基本となり,専攻医からは「早く臓器別サブスペシャルティに進みたい」などの声も聞かれています。

 そもそも新しい内科専門医制度はどのような背景で開始されたのでしょう。

岡崎 医療の専門分化により臓器別診療体制が進み,先進医療が向上しました。一方で専門領域に特化するあまり,内科医の全身を診る能力が低下していることが問題とされてきたことがきっかけです。

 また2004年に初期臨床研修制度が開始されると,認定内科医の研修期間に初期臨床研修が組み込まれました。さらに研修内容として内科や外科,救急,小児科,産婦人科,精神科,地域保健・医療の7科目のローテーションが義務付けられました。これらの結果,内科全体における研修期間が短縮され,内科系研修のサブスペシャルティ研修への偏りが生じたのです。

 もちろんサブスペシャルティとして臓器別の専門性を身につけることは大切です。しかし多くの場合,内科診療は一つの臓器の診療では完結しないため,全身を総合的に診療できる医師が求められます。そこで内科全般にわたる標準的な知識と技能を修得しgeneralなマインドを兼ね備えた内科医を養成するためにさまざまな議論が重ねられました。その結果,従来の認定医制度は2020年度に終了し,新しい内科専門医制度の下,2021年には新しい内科専門医が誕生する運びとなりました。

――2021年7月に第1回の内科専門医試験が実施されます。具体的な出題傾向を教えてください。

岡崎 全250問のうち,消化器や循環器,総合内科など10分野について必須の知識や判断力を問う一般問題が100問,年齢や性別を記載した症例から診断や治療を問う臨床問題が150問と,臨床問題の比重が大きい試験となります。臨床問題は,具体的には内科救急疾患の初期治療に関する問題や,コモンディジーズを中心に治療方針と対応を問う問題,症候から鑑別診断を進める臨床医の思考過程に沿った問題などが出題される予定です。

――出題分野で特に重視される領域はあるのでしょうか。

岡崎 ええ。一つは総合内科分野です。出題数を増やし,同一の症例に関して医療面接や身体診察所見,検査,病態生理,診断,治療という一連の流れで問う臨床実地長文連問形式が導入されます。

 もう一つは内科救急分野です。多くの場合,診療場所によって内科医に求められる能力は異なります。例えばへき地の診療所ではプライマリ・ケアの能力,大学病院ではより高度なICUやHCUでの能力などでしょう。しかし患者さんが救急搬送されてきた時に対応する内科初期救急の能力は,診療場所を問わず必須です。

――おのずと試験の難易度は高くなりそうですね。

岡崎 研修期間が長くなる分,従来の1階部分の資格である認定内科医試験よりも求められるレベルが高くなるのは確かです。ただし2階部分の資格である総合内科専門医試験のレベルまで難易度を引き上げるわけではありません。

――試験対策を通じて,専攻医にはどのような能力を涵養してほしいと考えていますか。

岡崎 内科医としての一貫した診療能力です。内科専門医試験では卒前・卒後教育のシームレ...

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自治医科大学医学教育センターセンター長・教授/日本内科学会資格認定試験委員会委員長

1984年自治医大卒。博士(医学)。93年より米スタンフォード大医学部リウマチ免疫科,99年より自治医大内科学講座アレルギー膠原病学部門准教授を経て,2008年より現職。日本内科学会資格認定委員会委員長。医師国家試験合格率9年連続全国第1位を達成する自治医大において,医師国家試験対策関連の部会長などを務める。

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