医学界新聞


第35回日本がん看護学会の話題から

取材記事

2021.03.22 週刊医学界新聞(看護号):第3413号より

 第35回日本がん看護学会学術集会(学術集会長=兵庫県立大・内布敦子氏)が2月27~28日,「ポストゲノム時代のケアを先導する」をテーマに開催された。本紙では,がん治療によって生じる有害事象を表現型,遺伝子型のレベルで分析・研究を行うChristine Miaskowski氏(米カリフォルニア大サンフランシスコ校)による特別講演「Transforming Health Through Genomics Nursing:Opportunities and Challenges」の模様を報告する。

 患者にとって最適な治療をオーダーメイドで提供し,健康状態を改善させるプレシジョン・ヘルスに注目が集まっている。この考え方が求められるようになった背景としてChristine氏は,2003年のヒトゲノム解析の完了による影響が大きいと指摘。世界中で進められるゲノムデータの収集およびそれらのデータを用いた各国の取り組みをまとめた論文[PMID:30609404]を紹介し,「これからの時代にはより一層プレシジョン・ヘルスが進展するだろう」と期待を寄せた。

 研究が進むプレシジョン・ヘルスの領域において看護師は何ができるか。氏は,看護師のゲノム研究へのかかわり方が重要だと訴え,2つの役割を挙げた。1つは収集するデータの質の担保である。ゲノムデータをはじめとするプレシジョン・ヘルスの達成に必要となる膨大な患者データは,研究者が分析し活用できる状態で適切に取得しなければならないと説く。また,そのためには看護師がゲノム分析のメカニズムや原理を理解し,ゲノムに基づいた効果的な看護介入についての研究を進めることが求められるとした。もう1つはデータ収集時における患者教育である。氏はその中で看護師による同意取得と情報提供の大切さを提示。患者の同意が変わる可能性を踏まえた説明を看護師が心掛けるよう求めた。さらに,遺伝性腫瘍のリスクへの評価や治療方法の選択などゲノムにまつわる患者の懸念点や疑問点を聞き取って適切にアドバイスすることと,患者にゲノム研究協力への意義や重要性を伝えることも,看護師の重要な役割になると述べた。

 看護師のゲノム医療への関与について氏は,「これまで身近ではなかった新しい領域に飛び込むには勇気がいるかもしれない。しかし看護師には怖れず,積極的にゲノム研究にチャレンジしてほしい」と呼び掛け,講演を締めくくった。

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