医学界新聞


日本漢方医学教育振興財団創立5周年記念講演会

取材記事

2021.03.08 週刊医学界新聞(レジデント号):第3411号より

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伴信太郎氏

 2001年に公表された医学教育モデル・コア・カリキュラム(以下,コアカリ)において,卒前教育の項目に加わった漢方医学教育。その後2回の改訂を経て,2016年度のコアカリでは「漢方医学の特徴や,主な和漢薬(漢方薬)の適応,薬理作用を概説できる」ことが医学教育の到達目標として位置付けられた。この目標を全ての医学生が達成できるよう支援し「良き医療」の実現に貢献する目的で,2016年に日本漢方医学教育振興財団が設立された。このたび同財団の設立5周年を記念した講演会が2月13日,Web配信の形式で開催された。本紙では,同財団の活動紹介および大学医学部の漢方教育に関する教育講演,医学教育における漢方の位置付けを述べた特別講演の様子を報告する。

 初めに,同財団専務理事である松村明氏(茨城県立医療大)が,同財団の現状と今後の展望について紹介した。同財団では,漢方医学教育に関連する5つの活動として,①大学医学部における漢方医学教育に対する研究助成,②教育に貢献した教員や研究者,研究グループへの表彰,③セミナーやシンポジウムなどのイベント型推進事業の開催支援や協賛,④医師の臨床スキルと教育手法の向上を目的とした漢方短期実地研修支援事業,⑤学生時代から広く漢方に触れてもらうための大学医学部東洋医学サークル活動支援事業,を現在行っている。これら事業のさらなる拡充に加え,全国の大学において漢方医学教育の推進・均てん化を図るため,コアカリに即した教材・e-learningコンテンツの開発および提供を2021年4月より開始することを発表。「今後も漢方医学教育における公益性の高い事業活動・体制作りをめざしたい」と,同財団の抱負を語った。

 続いて,「大学医学部における漢方教育の現状と課題」をテーマに,東北大の髙山真氏が教育講演を行った。氏は,総合診療科をはじめ現場での漢方薬処方が珍しくなくなった近年,漢方教育の必要性が高まっていると強調する。そこで東北大では,各学習段階に応じた目標設定のもと,卒前・卒後一貫した漢方教育の基盤整備を行っているという。同大の特徴的な卒前教育の一つとして,2年次に行っているアクティブ・ラーニングの教育手法を用いた漢方PBL(Problem Based Learning)を紹介した。PBLでは若手漢方医の指導のもと,定められたテーマに沿って学生たちが調査やデータ解析といったグループワークを行う。学びの成果を学生自身が国際学会で発表したり国際学術誌へ投稿したりする経験を通して,自ら問題を抽出し解決する能力の育成を狙う。今後もコアカリの改訂などに伴い,漢方教育の在り方を工夫していく重要性を訴えた。

 「西洋医学と東洋医学とを結びつけた実践により,臨床医としてワン・ステップ上をめざせる」。医学教育における漢方の位置付けを語ったのは,同財団理事長の伴信太郎氏(愛知医大)。日本漢方生薬製剤協会が2011年に行った漢方薬処方実態調査によると,漢方薬処方経験のない医師の8割に処方の意向があるという。このような漢方薬処方に関心のある医師のファースト・ステップとして,漢方医学の「基本的な臨床能力の教育」が必要であるとの見解を述べた。氏は「教育(education)とは,学習者の能力を引き出す(educate)営みである」との考えを示した上で,知識・情報収集能力・総合的判断能力・技能・態度の5つの柱から成る臨床能力を教育する際には,「知識を伝達するだけでなく,まずは自身で漢方薬に触れてその効果を実感してもらうことが大切」と述べ,発表を締めくくった。

同財団では新規事業「大学医学部東洋医学サークル活動支援事業」をはじめ,各種事業への応募者を募集している。詳細は財団ウェブサイト参照。