医学界新聞

寄稿 山本晴子

2020.12.14



【視点】

医薬品副作用被害救済制度周知に向けたPMDAの取り組み

山本 晴子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医務管理監・理事長特任補佐)


 医薬品は疾病の治療に必要不可欠なものだが,有効性がある一方,一定の確率で副作用も起こり得る。医薬品の使用に当たって万全の注意を払っても,誰にどのような副作用が起こるかを確実に予測することはできず,副作用の発生を完全に防ぐことは難しい。過去にはサリドマイドやスモンなどの痛ましい薬害事件も起こっている。このような歴史の教訓を踏まえ,医薬品の副作用によって一定限度を超える健康被害(入院治療,生活に支障を来す程度の障害等)を受けた方に対し,医療費,医療手当,障害年金等の給付を行うことで健康被害者の迅速な救済を図ることを目的に,1980年に医薬品副作用被害救済制度(以下,本制度)が創設された。

 しかしながら創設から40年を経た今なお,本制度の認知度が高いとは言えない。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が2019年度に行った認知度調査では,本制度について「知っている」「聞いたことがある」と答えた医療関係者は83.5%,一般の方は30.2%であった1)。本制度は医薬品の副作用によって健康被害を受けた本人が請求する制度のため,制度を知らなければ請求もできない。そのため,PMDAでは毎年10~12月を本制度の集中広報期間として広報活動を行っている。以下,概要を紹介したい。

本制度の請求から決定までの流れ

 本制度の流れをに示す。本制度では健康被害を受けた本人または遺族がPMDAに直接請求を行う。その際,発現した症状および経過,原因とみられる医薬品との因果関係等を評価するための資料として医療機関の作成する診断書等が必要になる(請求者から文書作成の求めを受けた医療機関はぜひご協力いただきたい)。PMDAでは提出された書類をもとに,その健康被害が医薬品の副作用によるものであるかどうか,医薬品の使用状況,疾病の程度などの医学的薬学的判断について,厚生労働大臣に判定の申し出を行う。その後,厚生労働省薬事・食品衛生審議会で審議され,厚生労働大臣の判定結果をもとに,PMDAにおいて支給の可否が決定される。

 救済制度の仕組みと請求の流れ(クリックで拡大)

 PMDAでは専門の職員を配置してフリーダイヤル(0120-149-931)による相談窓口を設けている。また,本制度の特設サイトに申請の流れや給付内容,申請様式などさまざまな資料を掲載している。

 本稿の読者の多くは看護師として医療機関等で日々患者さんに接していると想像する。多くの患者さんにとって看護師は,医師に聞きにくいことや,ちょっとした困りごとを相談しやすい,最も身近な医療者である。患者さんやご家族の相談,同僚との打ち合わせ等の際,医薬品の副作用を少しでも疑ったらこの制度のことを思い出していただきたい。副作用で困っている患者さんに本制度をご紹介いただくことで,医薬品の副作用により健康被害を受けられた方が一人でも多く救済されるようご協力いただければ幸いである。

参考文献・URL
1)PMDA.救済制度に関する認知度調査.


やまもと・はるこ氏
1988年阪大医学部卒。精神科,神経内科領域で研修後,スイス・ローザンヌ大病院神経内科留学。2000年国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター(当時)にて新薬審査業務に従事。03年より国立循環器病研究センター先進医療・治験推進部長,臨床研究管理部長,理事長特任補佐等を務める。20年10月より現職。

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