研修医だからこそ知っておきたい
「救急外来診療メニュー表」で学ぶ“お金”の話
寄稿 三谷 雄己
2020.10.12
【寄稿】
研修医だからこそ知っておきたい
「救急外来診療メニュー表」で学ぶ“お金”の話
三谷 雄己(広島大学救急集中治療医学所属/県立広島病院救急科勤務)
皆さんは,救急外来で実施される検査や処置によって,普段どれだけの“お金”が発生しているのかをご存じでしょうか? 診療報酬やDPCといった言葉や概念について,聞いたことはあっても十分に理解できていない方も多いのではないでしょうか。
こうした病院の“お金”にかかわる業務は上級医が担うことが多いですし,日々の診療で必要となる医学知識と比較すると,忙しい研修期間に学ぶ必要性を感じないかもしれません。しかし,病院で働く医療従事者である限り,最低限は知っておかなくてはならないことがいくつか存在します。
本稿では,病院にまつわる“お金”を理解する上で大切な「診療報酬の仕組み」をまず解説します。さらには,多忙な研修医でも最低限の知識を踏まえた診療ができるように筆者が考案した,「救急外来診療メニュー表」を紹介いたします。
診療報酬の仕組みと最低限意識すべきこと
診療報酬とは,保険診療による治療や検査を行った際に得られる報酬のことです。この報酬は,医療行為にかかる器材や作業量などを反映した原価(コスト)を参考に,国が価格を設定しています。普段私たちが何気なくオーダーしている採血検査や実施している創傷処置にも診療報酬が発生しており,これに自己負担割合を掛けた金額が,実際に患者さんが病院等で支払う自己負担額となります。
診療報酬は,病院の収益や患者さんの経済的負担に直結します。われわれ医師は病院経営にかかわる一員であり,保険診療の診察料や治療費を患者さんからいただいている以上は,各種検査や処置にかかる診療報酬について知ることはとても大切なのです。
次に,診療報酬算定の仕組みについて,概要を簡単に説明します。制度上は,初診・再診や入院時の基本的な診療行為をひと括りにした「基本診療料」と,これとは別に特別の診療行為に対して個々に点数が付く「特掲診療料」で構成されます。図1では,医師の視点からみて理解しやすいよう,診察の【基本料】,検査や処置の【実施分】に,休日・夜間などの【加算】を加えた3つの要素によって算出されるものとしてまとめました。
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図1 診療報酬の構造(概要) |
基本料や加算は,病院の機能や体制,受診のタイミングなどによって決まります。一方,実施分については医師が必要に応じてオーダーした分だけ発生するため,われわれ医師の裁量によって大きく変動します。研修医の皆さんにとって,前者(基本料)は専門的で難しいかもしれません。まずは後者(実施分)にフォーカスして,自身の診療行為と診療報酬をひも付けて考えることをお勧めします。つまり,医師が診療報酬について考える上で重要なのは,各種の検査や処置が本当に必要なのか,そしてそれぞれ...
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