疾患の本質的所見を見抜く皮膚病理診断力の高め方
寄稿 安齋 眞一
2020.10.05
【視点】
疾患の本質的所見を見抜く皮膚病理診断力の高め方
安齋 眞一(日本医科大学武蔵小杉病院皮膚科・皮膚病理診断室 教授)
皮膚病理検体から疾患名を特定し,適切な診断を下すためにはトレーニングが欠かせません。皮膚病理診断力を磨くにはまず,正常皮膚の所見を知る,日常よくみる疾患の典型的病理組織像を理解する,といった最低限の「常識」を持つことが必要です。その基礎知識を覚えてもらう取り組みが,日本皮膚科学会総会で毎年開催されている教育講演「実践! 皮膚病理道場」です。講演の内容は書籍化されており1, 2),実際にバーチャルスライドを見ながら自習ができるWeb付録も付いています。さらに,より専門的な知識を得られるよう日本皮膚病理組織学会では,「皮膚病理道場あどばんすと」(年2回開催)と皮膚病理診断講習会を開催しています(同学会ウェブサイト)。
皮膚病理診断力を高めるには,教科書を使った学習ももちろん重要です。ただし一般的な教科書は,「この疾患にはこの所見がある」と書かれていることが多いため,初学者は記載された所見が鑑別の際に全て必要だと思い込みがちです。すると,例えば上皮内の有棘細胞癌であるBowen病の診断で,集塊細胞(clumping cell),異常角化細胞(dyskeratotic cell),異型核分裂像の3つの所見全てが確認できないと,果たしてBowen病と診断してよいか迷ってしまいます。Bowen病でしばしば見られるこれらの所見は,実は診断に必須ではありません。病理診断に本当に必要な所見は何かを理解する必要があるのです。
皮膚病理診断の「常識」を手に入れた後,さ...
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