MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2020.08.24
Medical Library 書評・新刊案内
庄田 守男 編
《評者》小坂井 嘉夫(医療法人協和会顧問/市立川西病院)
不整脈デバイスの「リード」に着目した稀有な医学書
不整脈治療デバイスに関する医学書は多数存在するが,ほとんどはジェネレータが主の医学書であった。本書のようなリードを主に取り上げた医学書は初めてである。本書では,リードの発達の歴史,リードの詳細な構造,ジェネレータに対応したリードの特殊性,リードの植込み手技,リードのトラブルの原因,リードの管理,リードトラブルの回避法,リードトラブルの対処法などが書かれている。
1960年に世界初の完全植込み型ペースメーカ(VVI)が植え込まれた。その後,リチウム電池やCPUの開発発展に伴い,生理的ペースメーカ(AAI,DDD,レートレスポンス),頻脈治療の植込み型除細動器(ICD),心不全を治療する心臓再同期療法(CRT),究極のリードレスペースメーカなど,ジェネレータは素晴らしい発展をしてきた。ジェネレータは開発当初から電池寿命の予想は可能であった。それに反して,リードは形状や材質が改良されたが,リード寿命は全く予想ができない。リードは感染や不具合が生じても以前は簡単に摘出できなかった。ところが私は1998年にBritish Columbia大でエキシマレーザシースを用いた抜去手術を見学し,約30分で非常に簡単に安全にリード抜去ができたのに仰天した。庄田守男先生も同じ経験から本書を編集されたと思う。不整脈治療デバイストラブルの多くはリードトラブルである。ジェネレータトラブルは製造メーカが関与する領域であり,医師が全く関与する余地がない。しかし,リードトラブルは医師の技量にかかわる領域がかなりあり,医師の技量によってリードトラブルが回避できるのである。したがって,本書は循環器医師に非常に役立つ医学書である。
本書では53名のエキスパート医師が,自身の経験に文献的考察を加えてリード・マネジメントを詳細に記述している。最近の外科医学書に用いられ始めた動画の採用も素晴らしい。QRコードにスマートフォンをかざせば直ちに手技や心エコーの動画が見られる。また,通常は紙面の10%を占める引用文献もQRコードで見られるように省略されているので,本書は288ページでもかなり充実した医学書になっている。
一方,本書ではページ数を減らすために略語が多用されている。多くの略語は臨床医学略語集に載っている略語であるが,普及していないものや自己設定の略語もあり,慣れれば問題ないが,一部は読み...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
対談・座談会 2025.06.10
-
#SNS時代の医療機関サバイブ 鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか
鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか対談・座談会 2025.06.10
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
最新の記事
-
#SNS時代の医療機関サバイブ 鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか
鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか対談・座談会 2025.06.10
-
対談・座談会 2025.06.10
-
Sweet Memories
うまくいかない日々も,きっと未来につながっている寄稿 2025.06.10
-
寄稿 2025.06.10
-
複雑化する循環器疾患患者の精神的ケアに欠かせないサイコカーディオロジーの視点
寄稿 2025.06.10
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。