医学界新聞

2020.06.01



Medical Library 書評・新刊案内


新臨床内科学[ポケット判] 第10版

矢﨑 義雄 監修

《評者》安達 洋祐(久留米大医学教育研究センター教授)

新しい時代の医学生のための教科書

ポケット判に一目ぼれ

 大学の書店で『新臨床内科学 第10版[ポケット判]』を見つけました。シンプルな表紙と優しい手触りに,久しぶりに胸が高鳴る「一目ぼれ」でした。早速,「序」を読み,編集コンセプトを見ました。「内科学の成書としての信頼性」を守って「コンパクトかつわかりやすく」まとめた「全面改訂」です。

 第1章に「主要症候」があり,65症候が96ページにわたって,定義・病態生理・初期対応・鑑別診断・治療方針に,90点の図表が添えられています。また,第2章以降の臓器系統別の章は,冒頭の数ページで「ざっくりわかる呼吸器疾患」のような形で,編集者が疾患群の全体像を解説していて,各章の手引きになっています。

スマートでわかりやすい

 内科の伝統的な教科書は「分厚い・重い・難解」というイメージがありますが,本書は少々違います。新しい時代の「医学生のための教科書」に変身しています。本文は疾患ごとに,定義・病態・診断・治療が短い文で簡潔明瞭に書かれ,重要な語句は橙色のゴシック体で強調されています。

 色塗りの箇条書きで疾患ごとに設けられている「疾患を疑うポイント」は疾患の症候からみた特徴が明快で,「学びのポイント」は疾患のエッセンスが一目瞭然です。随所に見られる「特論」では専門的な検査や治療が詳しく解説されています。

 「実習のポイント」は,診療参加型臨床実習で患者を受け持った医学生に対する指導医のアドバイス,「トピックス」は疾患を学んで基礎知識がついた医学生に対する専門医のレクチャーのようです。図表・イラスト・カラー写真が豊富で,索引が80ページと充実しているのも,本書の魅力です。

「One Team」637人が執筆

 本書の特長の一つは,類書にない充実した執筆陣です。「One Team」となって監修・編集されている安心感と信頼感があります。医学の本道である内科学の最新情報を効率よく把握できるように,各章の編集者が原稿を細部までチェックしています。14人の編集者の熱意と使命感がうかがえます。

 総勢637人の執筆者は,診療と教育の専門家です。医療の現場で患者の診療に携わり,臨床研修病院で研修医を指導し,大学病院で医学生を教育している医師が,各自の専門領域や得意分野を担当しており,日本の内科医の英知の結集です。

腰を据えて教科書を読破

 全国の医学生の皆さん。新型コロナウイルスの感染拡大で臨床実習が制限され,自分で勉強する時間が増えたと思います。この際,余裕ができた時間を,『新臨床内科学』を読む時間に使ってみませんか。

 本文が全部で1880ページ。1日10ページ読めば6か月,1週間に1章なら3か月で読破できます。第1章の「主要症候」は最後に読むのがいいかも。(過去問や選択肢に奮闘するより)典型的な疾患像や患者像(illness script)を頭に入れることがいかに大切か,実感できるでしょう。

 内科の教科書を読破すれば,大きな力と自信になり,医師になるための土台固めができます。学生時代に内科の勉強を怠けたことを反省している元外科医の「学問のすすめ」です。

A5・頁2002 定価:本体18,000円+税 医学書院刊
ISBN978-4-260-03807-2


プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 第3版

坂井 建雄,大谷 修 監訳

《評者》池上 浩司(広島大教授・解剖学/発生生物学)

進化しつづけるプロメテウス

 『プロメテウス解剖学アトラス』の『胸部/腹部・骨盤部』は初版が2008年,第2版が2015年の発行であり,初刊行から12年,第2版から5年の歳月を経ての改訂である。『解剖学総論/運動器系』『頭頸部/神経解剖』がそれぞれ2017年,2019年に第3版に改訂され,残るはこの1冊のみと待ちに待った待望の改訂版である。他の巻と合わせて3巻で1500ページ,他の解剖学アトラスの2倍以上と,圧倒的情報量を誇る邦訳プロメテウスの第3版(原書第4版)がここにようやく完成した。

 本書の特徴の第一は初版から続く圧倒的美しさのイラストであろう。人体はある種の芸術作品であると感じることが多いが,本書の図はそれをさらに強く感じ...

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