今なぜ心不全療養指導士が必要なのか
寄稿 小室 一成
2020.05.11
【視点】
今なぜ心不全療養指導士が必要なのか
小室 一成(日本循環器学会代表理事/東京大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授)
わが国では現在約100万人もの心不全患者が存在すると推計され,超高齢化の進行により今後患者数,死亡者数ともに急増すると考えられている。そこで日本循環器学会は「心不全パンデミック」という言葉で警鐘を鳴らしている。
心不全は通常呼吸困難で発症し,時には救急車で病院に搬送されることがあるものの,ほとんどの急性心不全患者は適切な治療により改善し退院することができる。しかし,これは症状が改善しただけであって心不全が治癒したわけではなく,以降は慢性心不全の状態となる。
退院後は専門医やかかりつけ医によって診療が継続されるが,多くの患者は再び呼吸困難の悪化といった急性増悪を発症し再入院する。慢性心不全患者はこのように入退院を繰り返すたびに,一段ずつ階段を下りるかのようにADLを低下させ最終的に死に至るのである。
心不全の予後は大変不良であり,急性心不全を一旦発症した患者の5年生存率は60%ほどで,がんと変わらない。この急性増悪を防ぎ,階段を下りる速度を少しでも遅くするためには,怠薬,過労...
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