2019年度保助看国家試験合格発表
看護師の合格者数は前年度より1746人増の5万8513人
2020.04.27
2019年度保助看国家試験合格発表
看護師の合格者数は前年度より1746人増の5万8513人
厚労省は3月19日,2019年度の第106回保健師国家試験,第103回助産師国家試験および第109回看護師国家試験の合格者を発表した。合格率は,保健師91.5%,助産師99.4%,看護師89.2%(表)。保健師は3年ぶりに合格率が90%台,合格者数は7000人台となった。看護師の合格率はマイナス0.1ポイントとわずかに下落したが,合格者数は1746人増加した。学校区分による合格状況は本ページ下部に示す。
表 保助看国試合格者数・合格率の推移 |
採点除外等となる問題は保健師国家試験で5問,看護師国家試験で4問だった。うち,保健師国家試験の2問,看護師国家試験の2問は「問題として適切であるが,受験者レベルでは難しすぎるため」と難易度が原因での採点除外となった。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,厚労省および各地の国家試験運営臨時事務所,各指定試験機関において例年実施されている合格者の掲示発表は取りやめられた。
本紙の取材に応じた首都圏の看護専門学校の教員は,合格率や試験問題の難易度について「例年通りだった」とした上で,「新型コロナウイルス感染症の影響で学生のお祝いができなかったのは残念だ」と語った。
第109回看護師国家試験の出題傾向分析
斉藤 由美(東京アカデミー東京校 講師) 必修問題:やや難化近年の傾向ではあるが,必修問題は第108回よりもさらに過去問題からの出題が減ったので,難しく感じた受験生が多かったのではないか。しかし問われている知識自体は難しくない。「AM 22包帯の巻き方」「AM 23皮下注射」,採点除外となった「AM 11 1回換気量」「PM 18 過呼吸」は正答率が低かった(当社独自分析)。これら基礎看護の問題の正答率が低いのは気になるところである。「PM 22赤血球製剤」は,看護師国家試験出題基準平成30年版(以下,出題基準)で追加された輸血に関する出題である。関係法規・社会保障の問題は社会保険,国民生活基礎調査,国民健康栄養調査などの頻出テーマからの出題が続く。解剖生理・疾病に関する問題は,一般問題のように正答を導くのに時間を要する問題が多かった。薬剤に関する出題はなく,視覚素材を用いた問題が2問あった。一般問題:広範囲な知識が必要第108回は2問に激減した視覚素材を用いた問題は今回3問に増えた。「AM 33感染防護」は4枚の写真を見比べればよいだけの問題にもかかわらず正答率が低かった。また,「AM 26固有心筋」「AM 28脳梗塞の画像診断」「AM 59配偶子の形成」「AM 89悪液質」などの新規問題も正答率が低かった(当社独自分析)。AM 59は出題基準で追加された減数分裂に関する出題である。「AM 46細菌性髄膜炎」は,髄膜刺激症状を問われているだけである。しかし髄膜炎は近年出題されておらず,髄膜刺激症状と言えばクモ膜下出血としか覚えていない,4大症状を全て覚えていない受験生が多かったのではないかと思われる。 また,「AM 73医療法における医療計画」「AM 74災害対策基本法の内容」「PM 35高齢者虐待防止法」「PM 89健やか親子21の課題と指標」といった法制度や健康政策の詳細についての出題もあり,これらも丁寧に学習しなければならない。「AM 49認知機能の評価方法」では各方法での評価項目や評価内容などを知っておく必要がある。「PM 28体温のセットポイント」は,セットポイントという言葉が理解できていない受験生が多かったのではないか。「PM 83加齢黄斑変性」「PM 84疥癬」等の老年関連も知識不足の受験生がいただろう。第104回以降,過去問のみの学習では正答を導くことが厳しくなっており,その傾向は強まっている。幅広い知識の習得と思考力が必要である。 状況設定問題:考える力が大切AM,PM各10症例で,読解力と正確な知識と思考力が求められている。「AM 96医療費助成制度」「AM 103 1型糖尿病の症状」「PM 92・93甲状腺全摘出後の症状と対応」などは知識不足から正答率が低かったと思われる。例年通り,優先順位をつける問題は正答率が低かった(当社独自分析)。対策としては,臨床検査データの基準値を正確に覚えた上で,看護師として何をすべきか,またその優先順位を理解しておくことが必須である。疾患に関する知識,公衆衛生・社会保障の知識もこれまで以上に求められている。実習では1つの疾患だけに着目するのではなく合併症なども含めて患者の看護に携わることが必要であり,アセスメント力と思考力を養うことも重要である。年々,臨床現場に即した出題が増加し,問われる内容も幅広く深くなっている。そのため学生には,低学年時から解剖生理と病態を関連付けて理解させ,多様化する患者像に対応できる思考力の教育,そして何より考えること自体の習慣付けが求められている。実習などを通してこれらの力のさらなる強化が重要である。 |
■2019年度保助看国家試験合格者状況
第106回保健師国家試験合格状況 |
第103回助産師国家試験合格状況 |
第109回看護師国家試験合格状況 |
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