医学界新聞

寄稿 八巻 知香子

2020.03.30



【視点】

信頼できるがん情報を全国の公共図書館に贈る

八巻 知香子(国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報提供部医療情報評価室 室長)


 2人に1人はがんになる時代。治療成績は年々向上し,現在では6割の人は治癒し,仕事と治療を両立させている人も多い。しかし,多くの人にとってがんは他人事であり,いまだ不治の病であるというイメージも根強い。診断されて初めて自分事となったがんに対して,冷静な判断ができない場合も多く,そんな不安と焦りに付け込む根拠のない治療法や商品も枚挙にいとまがない。

 国立がん研究センターがん対策情報センターが2006年に設立されて以降,ウェブサイト「がん情報サービス」を通じた情報発信に加え,インターネットが利用できない人にも情報が届くよう,冊子や書籍による情報発信も行ってきた。「がんの冊子」シリーズは,各種がんの治療や療養の情報を扱う20~30ページの小冊子で,34種類を刊行している。特に高齢者では紙媒体のニーズは高く,これらの冊子は全国に436か所(2020年3月1日現在)あるがん診療連携拠点病院等で配布され,毎年80万~100万部が活用されている。

 しかし,病院を通じた情報提供には限界がある。病院に来るのは,がんの診断,もしくはがんの疑いのある患者さんやその家族であり,大きな不安を抱えて病院を訪れる。普段ならば目に入る情報も目に入らなかったり,冷静な時であれば疑うような宣伝に吸い寄せられたりすることも多い。がん診療連携拠点病院に設置された「がん相談支援センター」...

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