MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2019.12.16
Medical Library 書評・新刊案内
余宮 きのみ 著
《評者》神山 智秋(ベルランド総合病院/がん性疼痛看護認定看護師)
看護師ができること,やるべきことがわかる実践書
著者は,学生のころから緩和ケア医を志し,リハビリテーション科を含むさまざまな診療科で研鑽を積み,緩和ケア医となっています。また,緩和ケア医として長年従事し,その経験から緩和ケア関連学会でも重役を担い活躍しています。そして,日々患者と向き合って得た経験と知識を生かし,専門書の執筆や全国で緩和ケア関連の講演を行っており,その講演は看護師の人気が大変高いです。
その著者による本書『がん疼痛緩和の薬がわかる本』は,さまざまな薬剤の登場とともに初版から第2版へと改訂されてきました。そして,その後も新たなオピオイド(ヒドロモルフォン)が発売され,「今あるオピオイドでいいんじゃないの?」「今までのオピオイドとどう使い分けたらよいの?」と混乱していた医療者にとって待望の第3版が今般,発行されました。
この本では,非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsなど)とオピオイド,そして,それらと併用することで鎮痛効果を高める場合がある鎮痛補助薬など,「がん自体による痛み」に使用される全ての薬剤について書かれています。中でもオピオイド,モルヒネから最近使用できるようになったヒドロモルフォンまで,それらの概要や魅力,注意点などが具体例とともに記されています。薬剤の比較やメカニズムをわかりやすく図や表にまとめており,具体的な処方例だけでなく,オピオイド副作用を予防,対処する薬剤,そして今,問題視されている薬物相互作用についても網羅されています。看護師の私たちが読んでも十分に理解できる言葉で記述されており,イメージしやすい内容になっています。また,「医師がどのような情報を必要としているのか」という看護師が知りたい点も記されてあり,読んだその日から生かせる内容です。
私は,がん疼痛看護を専門とする認定看護師として,日々医療用麻薬を取り扱い,どうすれば患者の痛みが軽減するのかを考えながら看護を実践し,また,看護師に疼痛看護について伝える立場です。この本を通して医師の視点や考え方を知り,著者のアプローチ方法と自分の方法を比較しながら活動しています。この本を読み進めると,著者が日頃からいかに看護師を観察し,看護の仕事を理解しているかがわかります。「医師の指示はなくとも看護師が鎮痛できることは多くあります」「そんなときこそ看護師の出番です」とがん疼痛をマネジメントする上で「看護師の役割」がいかに大切かを伝え,「生活のなかの痛みの原因について考える」「どうすれば,痛みを生じさせずに生活できるか」と,どうやって看護に生かすのかまで導き,「看護師ができること」「看護師がやるべきこと」を詳細に記しています。「看護師だからこそ」という大切な視点を他職種に気付かされ,正直「悔しい」とさえ感じます。
がん患者の痛みとその対処法を理解することで,その日から実践する看護が変わります。この本は,「がんの痛みで苦しむ患者」の看護を実践している看護師に向けた著者からのエールであり,ニードであると思います。がん患者と向き合う看護師にお薦めしたい一冊です。
A5・頁292 定価:本体2,300円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03895-9
松浦 信子,山田 陽子 著
《評者》内田 春菊(漫画家,作家,俳優)
さらに優しく,わかりやすい
「ストーマの位置,決めますね~。このへんでしょうか?」と直腸がんの手術のために入院したその日,まず左わき腹にマーキングされた時は現実感もなく「ほんとに……?」とぼんやりしていました。主治医から,「意外と腸が伸びた場合は永久人工肛門にはならないこともあります」と言われたことばかり気にして,そっちだといいなとずっと考えていたのです。しかし麻酔から目が覚めたら,「永久」を表す左側にそれが造設されていました。
のちに主治医は「内田さんはあっというまに対応し,それはそれは早かった」と語ってくれましたが,自分ではわかりません。それなりに落ち込んでもいました。しょんぼりしてても新しい体との生活には慣れなければなりません。よくわからないうちに一度だけ夜中に装具がはがれてしまい(たぶんガスによる破裂),大惨事になったこともありました。しかし,「私が夜中も見に来たらよかったですね……」と担当の看護師さんは私のことはまったく責めず,寝具をあっという間に全とっかえ。うまくやれたときに褒めてくれるだけでなく,「形カワイイですね!」「ほらちょっとお通じが顔を出してますよ!」などと,まるで新しいペットを愛でるかのような言い方をしてくれる人もいました。「不思議な体になっちゃった……」と戸惑っていた私に,それらがどれほどの励ましになったことか。
慣れてみれば,以前と比べてできなくなったこともそんなになく,子どもたちも私がオストメイトだということを忘れている今日この頃です。去年は仕事でボローニャ大まで行きましたが,15時間のフライト中,気圧によるバルーニングすらなく,全日を着物で過ごしました。
『快適! ストーマ生活』の初版は「快適に行きましょう!」という気合の入ったタイトルに惹かれ,少し前に買って読んでいました。入院中に励ましてくれたり,ストーマ外来でアドバイスしてくれた看護師さんたちのことを思い出しました。自分のストーマの世話は当事者だからやるしかないけど,仕事として考えたら,絶対私には無理。そんな大変なことよく職業に選びましたね!? とインタビューしたいくらいです。
第2版は大きくなってさらに見やすく詳しいですね。「私の使ってる装具も載ってる~」と喜んでおります。
B5・頁144 定価:本体2,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03911-6
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