医学界新聞

2019.11.18



Medical Library 書評・新刊案内


ジェネラリストのための眼科診療ハンドブック 第2版

石岡 みさき 著

《評者》中西 重清(中西内科院長〔広島市〕/21世紀適々斎塾塾長)

内科開業医のための眼科テキスト

 本書は内科開業医のための眼科知識を高める必読書である。「眼科医がいない状況で非専門医がどこまで診療するのか,どの時点で紹介するか」が的確に解説されており,自信を持ってお薦めしたい。

 眼症状の相談を受けると,総合病院ではなく,近くの信頼できる眼科開業医に紹介するのが常であろう。それは普段から顔見知りで,疑問点を何でも相談できる関係だからである。著者の石岡みさき先生は,内科開業医がどんな眼科疾患に困り,何を知らないかを熟知している。外来患者さんは高齢化して多疾患を併存し専門以外の知識が必要で,ポリファーマシー(多剤処方)を併せ持っている。「目が悪い」と言えばすぐに眼科紹介,「腰が痛い」と言えば整形外科紹介では,患者ニーズに応えることができない。経過観察ができそうなら「様子を見ましょう」と伝え,「こういう眼科疾患なので薬を出しておきますね」と答えられるようになりたい。

 本書は,第1部「救急・ER――『眼の患者』をどこまで診る? いつ紹介する?」,第2部「プライマリ・ケア――日常診療でよく出会う眼科疾患」,第3部「眼科あれこれ――知ってトクする眼の話」の3部で構成されており,広範かつ網羅的な内容である。

 巻頭の「眼症状の診断フローチャート」(複視,眼痛,充血)では,眼症状の診断ノウハウをわかりやすく理解できる。

 第2部「プライマリ・ケア」の眼科疾患は必読である。往診患者さんも増えており,第7章「寝たきり高齢者の眼科治療」では,継続か中止すべきかの薬剤選択は参考になる。第10章は「眼に症状の出る全身疾患」について記載されているが,いかに多くの内科疾患が眼症状を有するかが理解できた。花粉症やドライアイ治療を行うことも多く,自信を持って点眼薬処方ができそうである。「花粉症に抗ヒスタミン点眼液は即効性があり,1月末から点眼が望ましい」「花粉症の時期はコンタクトレンズを休んでもらったほうが症状は出にくくなり,どうしても使用したいのならワンデータイプが楽」「ドライアイとアレルギー性結膜炎の軽症例の鑑別が難しい」ということも知った。

 第3部「眼科あれこれ」で,眼科を最初に受診する他科疾患も目新しい知識である。外来で相談を受ける眼瞼下垂のほとんどは加齢性であり,とても増加している。眼科に頭痛で受診する患者は,ほとんどが眼性疲労である。13編の「COLUMN」も読者を楽しませる,とても興味深い内容だ。巻末の付章には,基本的な点眼薬が写真付きで掲載されてあり,とても役立つ。本書は電子書籍も販売されており(医書.jp,URLはhttps://store.isho.jp/),iPadなどのタブレット端末で閲覧すれば,画像は奇麗に拡大可能で,視力障害のある私にはとても助かる。

 最後に,初版刊行から3年目に第2版を執筆された石岡先生の活力と努力に感謝するばかりだ。

A5・頁216 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03890-4


双極性障害 第3版
病態の理解から治療戦略まで

加藤 忠史 著

《評者》渡邊 衡一郎(杏林大教授・精神神経科学)

豊富な経験と知見に基づく圧倒的な説得力を持った一冊

 本書は,現時点における双極性障害のまさに全てが詰まっている,と言っても過言ではない。双極性障害の歴史に始まり,疾患の概要,診断や治療戦略の立て方,さらには最新の生物学的知見による種々の病態仮説に至るまで幅広く網羅されており,引用文献だけでも813篇にのぼる。この著者の豊富な経験とこの膨大な知見に基づいた本書は,圧倒的な説得力を持っているといえよう。

 評者がまず驚いたのは,本書の礎となる初版は1999年に発表されているのだが,これは著者が医歴11年目にして執筆したということである。当時は,まだ双極性障害に対する理解も不十分であった中,医歴11年目にしてこのような成書を完成させたことに驚きを隠せない。このことからも,著者が双極性障害研究の第一人者であることは間違いない。

 初版の発表から20年,双極性障害についてはさまざまな議論がなされ,かつてない程に注目を集めてはいるものの,現状としては未だ定説となるものが少ない。そんな状況の中出版されたこの第3版は,異なる説が存在する場合は両論を併記し,さまざまな病態の記載に続いて症例を提示するということで,発展途上とも言えるこの疾患の“今”を非常にうまく表現している。一般的な成書は,「この疾患の症状はこのようなものである」,という記載で構成されていることが多いが,字面だけでは精神科の専門医でさえも実臨床でのイメージが湧きにくいことがある。しかし本書では,疾患ごとの症状に加えて症例を見ることでその病態をより深く,またどのように経過していくかをより具体的に知ることができる。さらに,混沌としているエビデンスに関しては,著者の丁寧な解説が入り,どのようにエビデンスを読み解くべきか,理解を深めることが可能となっている。

 双極性障害における名著としては,洋書ではあるが2007年に出版されたGoodwinとJamisonによる『Manic-Depressive Illness:Bipolar Disorders and Recurrent Depression』が一般的に有名であるが,本書はもはやそれを上回る名著といってもよいのではなかろうか。

 この分野の研究や治療は日進月歩である。数年後さらなる進化を遂げるであろう第4版を期待せずにはいられない。いずれにせよ,本書は双極性障害治療に携わる医療者の必携の一書である。読み応えのある一冊であるが,これまでの経験や知識の再確認ができるとともに,新たな視点を得られるかもしれない。ぜひ臨床や研究の傍らに置き活用していただきたい。

A5・頁440 定価:本体5,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03917-8


脊髄損傷リハビリテーションマニュアル 第3版

神奈川リハビリテーション病院 脊髄損傷リハビリテーションマニュアル編集委員会 編

《評者》柴田 八衣子(兵庫県立リハビリテーション中央病院リハビリ療法部/作業療法士)

学生の導入書にも,

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