医学界新聞

寄稿

2019.11.18



【視点】

科学的根拠に基づいた伝統医学のISO規格策定をめざして

並木 隆雄(日本東洋医学会副会長・理事/千葉大学大学院医学研究院和漢診療学准教授)


 全世界で数十億人が伝統医学を使用しているといわれる。この中で,漢方を含む東アジアの伝統医学は医療の多様化の観点から国際的にも需要が高まっている。2005年頃より国際疾病分類第11版(ICD-11)の改訂作業が始まり,改訂の目玉の一つとして東アジア伝統医学を盛り込むことが検討された。調整には長い道のりがあったが,ついに2019年5月の第72回世界保健総会で採択が決定された。

 一方,中国が国際標準化機構(ISO)に新しい委員会の設立を申し出て,中医学を中心に伝統医学を世界的に広めようとTC 249(のちに名称が中医学となる)を2010年に発足させた。天然薬物(朝鮮人参・葛根・麻黄などの生薬),製剤,医療機器,医療情報にわたる規格案が検討され,伝統医学関係の産業化に資することとなる。

 ISO/TC 249は,伝統医学の流通促進を目的に,生薬や製剤,伝統医学で用いる診療機器,医療情報に関する国際規格を定める場である。ICDも同様に国際標準規格のひとつであるが,両者の標準化の違いは,ICDは各国の採用が任意であるのに対し,ISOは成立した規格に強制力がある点である。

 東アジア伝統医学は,もともとは古代中国医学から分かれ,中国は中医学,韓国の韓医学,モンゴルの蒙古医学,日本は漢方医学となった()。同根ではあるが,それぞれの国の気候,風土,食事などの違いを背景に発展したこともあり,別の医療体系である。そのため,日本の漢方医学と中医学・韓医学をICD-11

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