MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2019.11.11
Medical Library 書評・新刊案内
本多 通孝 著
《評者》篠原 尚(兵庫医大主任教授・上部消化管外科学)
外科医が臨床研究を始める前に一読すべき名著
院内で抄読会を行っている消化器外科医なら,Michitaka Hondaの名前を一度は目にしたことがあるだろう。ステージI胃癌の腹腔鏡手術と開腹手術のアウトカムを観察研究で比較し『Annals of Surgery』に掲載された有名なLOC-1 studyをはじめ,数々の一流誌に質の高い臨床研究を報告している気鋭の消化器外科医である。今回,「『…先生,手術は成功ですか?』こんな質問にどう答えますか!?」という帯の文句に思わずひかれて,本書を手に取った。外科医がこれまで何となく曖昧にしてきた「手術のアウトカム」をどう評価すべきかを論じた,本多通孝先生渾身の著作である。
数ページも繰らないうちに,私は読むのを止めた。本書は前作,『外科系医師のための手術に役立つ臨床研究』(医学書院,2017)の続編になるが,前作を読まずして本書を読み始めることがすごくもったいなく感じたからである。世上,臨床研究について書かれた本や医学統計の入門書は多いが,前作では外科医がとっつきやすいClinical Questionを例に挙げ,それを洗練されたResearch Questionに変え,臨床研究の定石であるPECOを組み立てながら研究のデザインを磨き上げていく過程がわかりやすく述べられている。ありがちな探索的研究の,著者曰く“ダサい”抄録が,仮説検証型研究のポイントを絞った科学論文にみるみる変貌していく過程は圧巻である。ただしPECOのうちP,E,Cは何とか設計できても,いつも行き詰まってしまうのがO,すなわちアウトカムであり,それをどうやって測定するのかが本書のテーマである。アウトカムは患者目線に立たなければ意味がないが,主観的要素が大きいため,それをデータ化するのは実は大変難しい。良い尺度が見つからなければ自分で作らなければならない。こうしたアウトカムそのものを深めていく作業は,実は手術を受ける患者さんの生の声を形にする,外科医としての本質的な研究となる。本書を読み終えると,それが著者の一貫したメッセージとして伝わってくる。
もっと若いころに本書を読んでいたら自分も少しはましな論文が書けただろうに,とじくじたる思いになった私は,大学院生に前作と合わせて本書を貸した。すると案の定,すぐに手元に戻ってきた。自分で買ったのでお返しします,今書いている論文を書き直してみます,とのこと。ほらね。外科医が臨床研究を始める前にはぜひご一読いただきたい名著である。
A5・頁276 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03932-1


福岡地区小児科医会 乳幼児保健委員会 編
《評者》横田 俊一郎(横田小児科医院院長)
時代とともに引き継がれ成長していく健診マニュアル
長い間待ち望まれた成育基本法が2018年末に成立し,次代の社会を担う子どもたちの心身の健やかな成育を確保するため,成育医療などを切れ目なく提供する施策を総合的に推進する基礎が出来上がった。それに伴い,乳幼児健診の機能をさらに充実させようとする機運が高まる中で『乳幼児健診マニュアル』が4年ぶりに改訂され,第6版が出版された。
本書は福岡地区小児科医会乳幼児保健委員会が,健診の実際的な方法について「乳児健診マニュアル」として1985年にまとめたのが始まりである。その後,1992年に医学書院から初版が出版され,全国の乳幼児健診にかかわる医師やスタッフに読み継がれてきている。乳幼児健診に必要な事項が過不足なく網羅されているだけでなく,最新の情報がその時々で付け加えられており,しかもコンパクトで携帯しやすく,実際に健診を行う際に本書ほど使いやすいものはない。
今回の改訂では「事故防止」「食物アレルギー」「禁煙指導」「子どもの歯の衛生」が新たな執筆者により書き換えられ,内容もより新しいものとなっている。特に「子どもの歯の衛生」ではきれいなカラー写真が加えられ,非常にわかりやすくなっていると同時に保護者への説明にも利用できる。
また刻々と変化する疾病の治療法や予防接種体制についても,新しい情報が取り入れられている。日本小児科学会新生児委員会が推奨する母乳栄養児へのビタミンK投与を生後3か月まで週1回続ける方法,臍ヘルニアの圧迫療法,母斑とレーザー治療,子どもの便秘の治療など,最近広まってきている新しい治療法が随所に盛り込まれているのも心強い。さらに2019年から始まった成人男子に対する風疹の追加的対策についても記載が加えられた。
日本小児科学会とその関連団体からなる日本小児医療保健協議会合同委員会内の健康診査委員会では,乳幼児健診を中心とする小児科医のための研修会を定期的に開催するようになった。評者が小児科医になりたての約40年前にはそのような研修会は全くなく,ほぼ自己流で乳幼児健診を行っていた。子どもの病気を診ることばかりに集中していた時代と比べて,現在は隔世の感があるが,福岡地区ではその古い時代から健診に真剣に取り組んできており,その努力と経験の結集が本書となっている。
本書の生みの親の一人であり,可愛い赤ちゃんのイラストをお描きになった松本壽通先生が昨年逝去された。身体の発育だけでなく,子どもの心の健康の重要性を古い時代から強調され,私たち外来小児科医の良き指導者であり,その優しいお顔を忘れることはできない。松本先生の願いは今後も本書とともに引き継がれていくことと思う。
乳幼児健診にかかわるのは小児科専門医だけではない。小児のプライマリケアを担う全ての医師,健診にかかわっている全ての医療スタッフに本書を利用していただくことを願っている。
B5・頁168 定価:本体3,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03935-2


ストラクチャークラブ・ジャパン 監修
有田 武史,原 英彦,林田 健太郎,赤木 禎治,白井 伸一,細川 忍,森野 禎浩 編
《評者》新浪 博士(東京女子医大教授・心臓血管外科学)
一読すれば治療の概要が理解できるコンプリートガイド
2013年に経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI),そして2018年に経皮的僧帽弁形成術(MitraClip®)が保険償還されるようになり,今や構造的心疾患に対するカテーテル治療「structural heart disease(SHD)インターベンション」は多くの患者さんに対する有効で画期的な治療法であることが認知された。特にTAVIに関しては,その良好な成績から外科的手術中等度リスク症例や二尖弁症例にも徐々に適応が拡大され,もはや日常診療の一部として取り込まれつつある。また,経カテーテル僧帽弁置換術・肺動脈弁置換術や三尖弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療なども海外ではすでに進んでおり,今後さらに発展していく分野と考えられる。
この分野の治療法の最も大きな特徴は,治療がインターベンション医のみでは完結せず,心臓血管外科医,循環器内科医,麻酔科医,放射線科医,臨床工学技士,看護師,診療放射線技師などのスペシャリストから成る,いわゆる「ハートチーム」の形成が大変重要であるということである。本書はSHDインターベンションの全てを網羅しているだけでなく,ハートチームのどの職種にも読みやすく,一読すれば治療の概要が理解できる構成になっている。
その特徴として,構造的心疾患のそれぞれの病態生理・解剖がまず説明されており,それに引き続いて診断,最新のガイドラインによる重症度評価・治療適応が述べられ,最後に一般的な外科的治療,最新のカテーテルインターベンション治療がその成績と共に詳しく解説されている。カテーテルインターベンションの手技の解説だけではないので,循環器内科医や心臓血管外科医が日常の診療のハンドブックとして,あるいは普段循環器疾患に携わっていない他職種が疾患の病態生理から治療の完結まで理解するための,その名のとおりコンプリードガイドとして有用であることは疑いの余地はない。
さらに近い将来本邦に導入されるであろう新しいデバイス,新しいカテーテルインターベンション治療が,最新のトライアルの状況とその成績と共に数多く紹介されている。今後SHDインターベンション治療を志す若手心臓血管外科医,循環器内科医をはじめとするハートチームには非常に魅力的で,無限の可能性を秘めた分野に携わっているという自覚を高められる唯一無二の書籍と考えられる。
SHDインターベンション治療は急速に発展している分野である。今後患者さんに最善の医療を提供していくためには欠かせない治療,あるいは治療の中心になりつつある。本書を手にしたSHDインターベンション治療に携わる全ての職種が,必ずやハートチームとして患者さんの安全・利益の...
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