東京2020に向けた医療対策を議論(第47回日本救急医学会の話題より)
2019.11.04
東京2020に向けた医療対策を議論
第47回日本救急医学会の話題より
第47回日本救急医学会総会・学術集会(会長=順大大学院・田中裕氏)が10月2~4日,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて,「不断前進,救命救急――今,ふたたび『仁』」をテーマに開催された。本紙では,シンポジウム「国際的な大規模イベントにおける救急災害医療体制(司会=東京医歯大大学院・大友康裕氏,富山大大学院・奥寺敬氏)の模様を紹介する。
CBRNE対策の構築が急務
2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック(以下,東京2020)に向け,種々の医療体制の構築が進む。その中でも日本の対策が手薄として注目を浴びるのが,化学(Chemical),生物(Biological),放射性物質(Radiological),核(Nuclear),爆発物(Explosive)を対象としたCBRNEと呼ばれる大規模な事故・災害およびテロ対策である。
日赤医療センター救命救急センターでは,東京2020関連会場でのCBRNEを想定した対応マニュアルを作成し,訓練を実施してきた。同院の戸塚亮氏は,訓練の経験から「対応マニュアルを準備していても,CBRNEの覚知方法など未確定の要素が多数存在する。マニュアルを用意し訓練することは最低限の対策」と述べ,病院全体を挙げた訓練の実施が必要だと強調した。
「効率的で汎用性の高いCBRNE対策を実行すべき」と主張したのは藤沢市民病院の阿南英明氏である。患者が必ずしもCBRNE対策された病院を受診するわけではないため,一部の選ばれた施設が重装備をするだけでは対応困難と氏は指摘。広く全ての病院が対応できるよう,防塵能力の高いマスクや特殊防護手袋の用意など,日常の救急診療の迅速対応に少し上乗せした実現度の高い対策を各施設で講じるべきと提案した。
2019年6月のG20大阪サミットに先立ち関西国際空港(関空)におけるテロを想定した医療体制を構築した経験について語ったのは成田麻衣子氏(大阪府泉州救命救急センター)。これまで,関空内でのテロ行為への対策として,制圧に向けた訓練はなされていたものの,傷病者の救急搬送を視野に入れた訓練は行われておらず,医療機関が積極的にかかわることはなかった。そのため氏が関空側に働き掛け,警察や消防を含めた多機関連携体制を構築した。早期止血のためのターニケット導入や特殊災害対応マニュアルの作成などを実現した。
万が一,CBRNEによる傷病者が出た際に対応できるよう医療技術向上も必要だ。比良英司氏(島根大)は,厚労省事業の一環として「外傷外科医養成研修...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
対談・座談会 2025.03.11
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
対談・座談会 2025.03.11
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
最新の記事
-
対談・座談会 2025.03.11
-
対談・座談会 2025.03.11
-
対談・座談会 2025.03.11
-
FAQ
医師が留学したいと思ったら最初に考えるべき3つの問い寄稿 2025.03.11
-
入院時重症患者対応メディエーターの役割
救急認定看護師が患者・家族を支援すること寄稿 2025.03.11
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。