医学界新聞

対談・座談会

2019.10.14



【座談会】

卒前教育にアクティブ・ラーニングの技法を(前編)
兵庫医科大学4年生における「英語で学ぶ臨床推論」の授業から

ゴードン・ノエル(米国オレゴン健康科学大学医学部内科学 教授)
大滝 純司(東京医科大学病院トータルヘルスケアセンター 副センター長)=司会
森本 剛(兵庫医科大学臨床疫学 教授)


 東大医学教育国際協力研究センターの客員教授として,2001年に6か月間日本に滞在した米国の内科医ゴードン・ノエル氏が本年4月の1か月間 ,兵庫医大医学部の4年生120人を対象に,「英語で学ぶ臨床推論」の授業を全8回行った(写真)。ノエル氏は2001年に帰国後もたびたび来日し,洛和会音羽病院(京都市)や手稲渓仁会病院内科(札幌市)など国内各地で医学生や研修医の指導に当たり,日本の医学教育の発展に資する提言を行ってきた(本紙第2833~2981号に「ノエル先生と考える日本の医学教育」を全26回連載)。

写真 教室内を歩きながら学生に次々と質問を投げ掛けるノエル氏。

 診療参加型臨床実習の導入や臨床研修制度の必修化など,日本の医学教育改革に伴い,学生・研修医のスキルレベルの向上があったと氏は評価する一方,欧米の医学教育学者が重要視する臨床推論は,まだ日本で十分に教授できていないと指摘。ケースメソッド教授法と呼ばれるアクティブ・ラーニングの技法を,卒前から取り入れる必要性を強調する。

 本紙では,ノエル氏,担当教員の森本剛氏,授業を見学した医学教育学の研究者で,かつて本紙連載でもノエル氏と対話を重ねた大滝純司氏の3人が,アクティブ・ラーニングを用いた兵庫医大の授業を振り返り,日本に合った臨床推論の教授法について議論した。


臨床医学知識をどう統合するか

大滝 兵庫医大の英語による臨床推論の授業を見学した私は,大教室で学生たちが活発に授業に参加する姿に驚かされました。アクティブ・ラーニングの重要性は,日本でも以前から強調されています。しかし,100人規模の大教室で行うのは容易ではなく,私も試行錯誤の日々です。兵庫医大の授業の成功の陰には,ノエル先生の豊富な教育経験による工夫が随所に発揮されていたと感じました。

 初めに,外国人教授を招聘した同大4年生対象の「英語で学ぶ臨床推論」が開講された経緯からご紹介ください。

森本 2013年に私が同大に着任した際,当時の中西憲司学長と鈴木敬一郎医学教育センター長から,2つの依頼を受けたことがきっかけです。1つは学生のアカデミックスキルを高める教育――マインドではなく,スキルです。2つ目は専門医学教育を丸々一単元,全て英語で行うことです。そこで,「英語で学ぶ臨床推論」の翌年の開講に向け,2013年の夏に授業の枠組みを決定し,外国人教授の選定に入りました。

大滝 選ぶ際,重視した点は何ですか。

森本 米国の教授は教え上手の方が多いので,学生が親しみやすいキャラクターを優先しました。そこで,私が市立舞鶴市民病院の研修医だった頃の指導医で,その後も洛和会音羽病院に指導に来られるなど交流が続いていたマイヤー(George W

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