医学界新聞

寄稿

2019.09.09



地域で学ぶ効果と魅力を伝えるには

高村 昭輝(金沢医科大学医学教育学講座講師)


 三重県名張市立病院の総合診療科立ち上げを手伝うため,私は2012年9月に同院に赴任しました。時期を同じくして同院は,4週間にわたる三重大の地域臨床実習の受け入れを開始しました。その際にスタッフで話し合ったのは,①真の診療参加型臨床実習にする,②学生が患者さんに責任感を持つようにする,③医師は,多職種チームの中の一員にすぎないと自覚してもらう,の3点です。

 ①の真の診療参加型とは,単に診察や手技を経験させるのではなく,主治医である指導医と看護師,その他の職種で行われるチーム医療の中で役割を持たせることです。私たちが日常行っている診療の中で学生に正当な役割を与え,学生がいないと日常診療が滞る状況をあえて作った,とも言えます。極めてチャレンジングな試みだったものの,医学教育として重要な意味を持ちます。それは,②の責任感を持って患者さんに接することにもつながるからです。そして,毎朝行われる医師同士の医学生物学的なカンファレンス,週に1回多職種による医療社会的なカンファレンスについて,それぞれ目的の違いを意識させながら学生自ら主導してもらうことで,チーム医療の認識を図ることも週間のスケジュールに埋め込みました。1年後,同院は学生に人気の実習病院になったと聞いています。

卒前に4か月間の長期臨床実習を経験する意義

 何でも素直に吸収する初学者のうちに地

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