第29回日本看護学教育学会開催
2019.08.26
第29回日本看護学教育学会開催
日本看護学教育学会第29回学術集会が8月3~4日,「未来の看護学教育を描く――ともに創出するカリキュラム」をテーマに,任和子学術集会長(京大大学院)のもと国立京都国際会館(京都市)で開催され,2300人を超える参加者が集った。
学生が育つカリキュラム開発をめざして
任和子学術集会長 |
シンポジウム「未来の看護学教育を描く――カリキュラムを開発する」(座長=Office Kyo―Shien・池西静江氏,同志社女子大・岡山寧子氏)では,まず吉田文子氏(佐久大)が,カリキュラム評価・開発に必要な視点を解説した。冒頭,氏は「カリキュラム評価における最も重要な目的はカリキュラムの効果検証ではなく,カリキュラム改善にある」と強調。改善のための評価システムであるCIPP(context,input,process,product)モデルを紹介した。中でも,Cの状況やニーズの情報収集が大切だと話し,評価を行う理由を各校で明確にすることが重要だと訴えた。
大塚眞理子氏(宮城大)は,大学における先駆的カリキュラムとして,同大で行う専門職連携教育(Interprofessional Education;IPE)を紹介した。IPEは,異なる専門職をめざす学生同士が同じ場所で学び合う体験学習であり,チーム医療や多職種連携推進の基盤となる。学内での学部・学科を横断したIPEが各地で普及し始めた反面,専門職課程を複数持たない単科大学では実現に至っていないことがある。同大ではこの課題解決のため,同じくIPE実現をめざしていた東北医薬大薬学部と教育研究連携協定を締結し,2017年から両校の実習病院である東北医薬大病院にて,それぞれの実習の場での共同IPEを開始した。「IPEによって看護学生は薬剤師の役割や薬剤師への接し方を学べるだけでなく,翻って看護師の役割や立場を学ぶことにもつながる」と話し,単科大学でのIPE普及に期待を寄せた。
水方智子氏(松下看護専門学校)は,同校で2019年度から開始した新カリキュラムについて概説した。同校では,指定規則別表三に基づいた枠組みで定めていた分野別の教育課程から,独自の5つの科目群への転換を図った。併せて,成人看護学を「おとなの扉をひらく」「おとなの生活改革支援」とするなど,授業内容を学生がイメージしやすい科目名へ変更した他,1年次から訪問看護ステーションや病院外来での実習を組み込むなど独自カリキュラムを策定した。氏は,実習後の1年生の声を紹介し,「なりたい看護師像が明確化され,学ぶ意欲が増進された」と,新カリキュラムの手応えを語った。
盛況のVR体験会,教育活用に期待高まる
また会期中,教育利用への期待が集まるVR(バーチャルリアリティ)に関するプログラムが複数あった。VR活用について教育講演を行った下河原忠道氏が経営する株式会社シルバーウッド協力のもと,会場内でVR体験会が催され,学会参加者のおよそ4分の1に当たる560人が体験した。今回用意されたVRはレビー小体型認知症の当事者である樋口直美氏が監修・作成したもので,幻視や幻聴をVRでの体験から学べるコンテンツ。体験者のアンケートからも,実習・演習などの体験から学ぶことを重視してきた看護学教育においてVRという新たな教育ツールが持つポテンシャルの高さが感じられた。
VR体験会の模様(写真提供=京大病院・古谷和紀氏) |
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