医学界新聞

2019.08.12



第21回日本医療マネジメント学会開催


 第21回日本医療マネジメント学会学術総会(会長=中京病院・絹川常郎氏)が7月19~20日,名古屋国際会議場(名古屋市)にて「私たちの働き方改革――良質で成熟した日本の医療をめざして」をテーマに開催された。本紙では,シンポジウム「働き方改革」(座長=済生会福岡総合病院・岡留健一郎氏,日看協・熊谷雅美氏)の模様を報告する。

働き方改革の実現に向け,効果的な推進方法を議論

 厚労省医政局の安里賀奈子氏は,近い将来,日本全体の労働人口減少によって働き手の獲得競争が厳しい社会となることを示し,医療分野も例外ではないことを強調した。現在の医療体制を未来につなげるためにも,「医師の働き方改革に関する検討会」報告書を機に,「少ない労働力ながら最大限のパフォーマンスを発揮できるよう,勤務環境の改善を行い魅力ある職場づくりをめざすべき」と会場に呼び掛けた。

 同報告書では,特例水準を除き,2024年4月までに「時間外労働時間数を月100時間未満(例外あり),年960時間(A水準)以下」とするよう設定されている。日病副会長を務める岡留氏は演者として登壇し,各医療機関がまず取り組むべき課題として,「診療科ごとでどの時間帯に,どれほどの業務量があるかを分析し,時間外労働時間の実態を的確に把握すること」を挙げた。計画的に労働時間短縮に取り組むことで,可能な限り多くの医療機関がA水準の働き方を達成できるよう協力を求めた。

 2018年に日看協から発表された「看護職の夜勤負担に関する調査研究報告会」の内容を紹介したのは熊谷氏。報告では,1か月72時間を超える夜勤は情動ストレスリスクを増加させ,起床時の疲労感が強い傾向を示したことが明らかになった。日看協としては今後,働き方の多様性を尊重しつつ,看護職が生涯を通して安心して働き続けられる環境づくりをめざす方針だ。

 「働き方改革は号令や気合いだけでは進まない」と訴え,働き方改革を効果的に推進するためのコツを紹介したのは裵英洙氏(ハイズ株式会社)である。労働環境改善を実行するためには,交渉術を生かして対象者の主体性を引き出すことが重要だとし,モチベーションを上げるための一つの方法として内発的動機付けの考え方を紹介した。現場負担を増やさないためにも小さなことから効率的な改革を実施すべきと提案した。

 患者から電話医療相談を受けるささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は,医師の働き方改革の実現には,患者側の理解と節度を高めることが必要と語った。医師以外の多職種がいるにもかかわらず,各職種の専門性や役割を理解している患者が少ないことを課題に挙げ,いまだに医療に関する期待が医師に一極集中していると指摘。これからもCOMLの活動を通じ,患者側の意識改革にも努めたいと結んだ。

シンポジウムの模様

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