医学界新聞

2019.08.05



第1回日本在宅医療連合学会大会開催


 日本在宅医学会と日本在宅医療学会は2019年5月に合併し,日本在宅医療連合学会として新たなスタートを切った。このたび第1回大会(大会長=東大和ホームケアクリニック・森清氏)が7月14~15日,「ひとつになる――医療 福祉 介護 行政との協働 連携から統合へ まちづくりに向けて」をテーマに京王プラザホテル(東京都新宿区)にて開催された。本紙では,新学会創立記念シンポジウムと題された「在宅医療は21世紀のイノベーション」(座長=新横浜在宅クリニック・城谷典保氏,あおぞら診療所・川越正平氏)の模様を報告する。

在宅医療分野の課題を共有し,新学会の今後のビジョンを提言

 国内の高齢者人口がピークを迎える2040年頃の人口構造の視点から在宅医療を切り取ったのは島崎謙治氏(政策研究大学院大)。在宅医療に対する国民の潜在需要は高いものの,人口比率に見る75歳以上の後期高齢者の増加と生産年齢人口の減少により,医療・介護を担う人材不足が将来的に課題になると述べた。人材不足解消の一手として外国人労働者への期待が高まる一方,日本以外のアジア圏でも少子高齢化が急速に進行しており,過度な依存も危険だと警鐘を鳴らす。そのため今後はICTなどの活用に加え,地域一体で支えるまちづくりが必要になると主張した。

 厚労省大臣官房審議官の迫井正深氏は,在宅医療推進のための基本的な考え方として,①在宅医療にかかわる者が協力体制を構築し,一体となって対策を展開すること,②国民の視点に立った在宅医療を実施し国民の理解を醸成すること,③エビデンスに基づく在宅医療を推進することの3点を挙げた。特に新学会には,「在宅医療分野のエビデンス構築の場になることを期待している」と語った。

 日本在宅医療連合学会代表理事副会長を務める石垣泰則氏(コーラルクリニック)は,在宅医療のパイオニアで前身の日本在宅医学会創設に貢献した故・佐藤智氏の教訓「病気は家で治す」を紹介。医療の形が多様化する現代において在宅医療に必要な成果は,「社会の中で皆が協力し患者が病気を克服することを助け,患者が前向きに人生を送ることを最期まで支援すること」と主張し,地域連携の必要性を再確認した。

 同学会代表理事会長の立場から蘆野吉和氏(北斗地域包括ケア推進センター)は,学会が取り組む今後の課題として①病院医療と地域医療との継続医療体制の構築,②在宅医療の質の向上,③看取りを念頭に置いた在宅医療提供体制の構築を挙げた。近年,看取りを前提とする在宅医療が増えていることに触れ,誰もが最後まで自分らしく生きることのできる社会,誰もが自分の住み慣れた場所で最後まで生活できる社会の創造に向けて,地域のまちづくりを見据えた学会活動に取り組みたいと抱負を語った。

写真 シンポジウムの模様

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook