FAQ 画像診断オーダーで押さえておきたい3つのコツ(山下康行)
寄稿
2019.06.10
【FAQ】
患者や医療者のFAQ(Frequently Asked Questions;頻繁に尋ねられる質問)に,その領域のエキスパートが答えます。
今回のテーマ
画像診断オーダーで押さえておきたい3つのコツ
【今回の回答者】山下 康行(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野 教授)
日常臨床において画像診断のウエイトは非常に大きく,救急疾患から慢性期の疾患まで多くの患者さんに対し検査が行われます。また,カバーする領域も全身にわたるため,読影のみならず,検査のオーダーでも何を選択すべきか迷ってしまうのではないでしょうか。
そこで今回は,研修医が押さえておきたい画像診断オーダーのコツについて説明します。
■FAQ1
画像診断の検査機器にはそれぞれどのような得手不得手がありますか。使い分けを考える上でのポイントは何でしょうか?臨床でよく使われる画像診断法には単純X線,超音波,CT,MRI,PETがあります。単純X線は比較的簡便で検査価格が安いメリットがあるものの,読影はかなり難しいです。現在でも胸部や骨,乳腺では必須の検査ですが,その他の臓器では診断的価値は高くありません。
超音波はベッドサイドの他,最近では整形外科領域でもよく使われます。しかし,腹部,乳腺,頸部など施行できる部位が限られています。
CTやMRIは全身どの部位でも施行可能です。CTは検査時間が短い,MRIはコントラストが高いという利点がある一方,CTは放射線被曝があり,MRIには検査に長い時間を要すなどの欠点があります。またコストも他の画像診断法より高く,その適応については厳密に検討した上で判断する必要があります。
PETなどの核医学検査は生体機能を見るのに優れた検査です。各部位で一般的に選ぶべき検査法については表で大まかに示したとおりです。
表 画像診断検査の大まかな選択 |
Answer…画像検査機器の得手不得手を理解し,部位・疾患・コストに応じた適切な検査を選択できるようにしましょう。部位や疑われる疾患によって用いる検査機器や方法に多少の違いがありますので,実際の検査のオーダーに関しては画像診断のテキストなどを参考にしてください。
■FAQ2
賢く適切に画像診断をオーダーするために心掛けるポイントはどのような点ですか?診断が付かないからと言って,確定診断を得ることを目的に,むやみに画像診断を行うのはよくありません。なぜなら,画像診断には被曝やコストなど負の側面も伴うからです。患者さんにとってのベネフィットとリスクのバランスをまずは考える必要があります。
一般に画像診断が有用なのは診断に迷うケースです。具体的には検査前の確率が20~50%程度の場合と言われています(図1)。
|
図1 検査前確率の考え方(文献1より作成) |
検査前確率が低い場合は検査リスク>ベネフィットとなり,検査の意義は低い。検査をしなくても診断がほぼ確実な場合は,直ちに治療を行うべき。20~50%の検査前確率の場合,画像診断の有効性が高い。 |
冠動脈CTを例に取ると,若年成人でリスクファクターがなく,虚血性心疾患を疑う症状もない「検査前確率が非常に低い」患者に対し,狭心症を心配してCT検査を施行する場合には,被曝,造影剤副作用の可能性,検査コストなど検査のリスクがベネフィットを明らかに上回ります。一方,狭心痛があり,心電図上...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
対談・座談会 2025.03.11
最新の記事
-
対談・座談会 2025.04.08
-
対談・座談会 2025.04.08
-
腹痛診療アップデート
「急性腹症診療ガイドライン2025」をひもとく対談・座談会 2025.04.08
-
野木真将氏に聞く
国際水準の医師育成をめざす認証評価
ACGME-I認証を取得した亀田総合病院の歩みインタビュー 2025.04.08
-
能登半島地震による被災者の口腔への影響と,地域で連携した「食べる」支援の継続
寄稿 2025.04.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。