医学界新聞

2019.04.29



第93回日本感染症学会開催


三鴨廣繁会長
 第93回日本感染症学会総会・学術講演会(会長=愛知医大大学院・三鴨廣繁氏)が4月4~6日,名古屋市内で開催された。2016年4月に発表され5か年計画で進む「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」がテーマのシンポジウム,「AMR対策アクションプランの検証」(座長=佐賀大・青木洋介氏,名市大大学院・中村敦氏)の模様を報告する。

アクションプランを将来につなげる取り組みが必要に

 中浜力氏(中浜医院)は,3府県17医療施設に訪れた患者1200人を対象に18年11~12月に実施した,抗菌薬に対する患者意識調査の結果を考察した。風邪に抗菌薬は効かないと医師に説明された際,希望者のうち92%は納得をし,91%は受診を継続した点に注目し,「医師による説明の効果は非常に高い」と語った。抗菌薬適正使用を広める方法を同院が独自に調査(n=100人)した結果,「抗生物質の不適切使用は,本当に必要な時に効果が低くなる」とのリスクを伝えるメッセージが適正使用に「最もインパクトがある」と述べた。

 続いて登壇したのは津山中央病院(515床)の藤田浩二氏。同院は2017年4月に感染症内科を立ち上げ,抗菌薬適正使用支援チーム(AST)と院内感染対策チーム(ICT)の活動を開始した。ASTラウンドの実施から半年で内服抗菌薬は第3世代セファロスポリンが減り,第1世代セファロスポリンが増加。培養検査オーダー数も約20%増えるなどの成果が出たと報告した。一方,ICT活動開始後も薬剤耐性菌検出率は横ばいで,手指衛生の不徹底など病棟ごとの課題も浮かび上がったという。氏は「AST活動とICT活動の両輪がかみ合ってこそ目標が達成できる。目標を多職種に周知したい」と語った。

 国公立大学附属病院感染対策協議会の立場から大毛宏喜氏(広島大)は,AMR対応に当たる会員校の看護師,薬剤師,臨床検査技師,感染症専門医の充足状況や課題を説明した。中でも臨床検査技師は,培養検体数が近年増加する一方で,100床当たり平均0.7人と少なく,経験3年未満の技師が占める割合が0~75%とばらつきが大きい点から,「業務急増への対策が急務」と指摘。「AMR対応には,各職種の課題を踏まえた人員配置と短期・中長期を見据えた人材育成が必要」と訴えた。

 具芳明氏(国立国際医療研究センター病院)は6分野の目標が記されたアクションプランの進捗を概説した。このうち「感染予防・管理」では,同院AMR臨床リファレンスセンターによる各種セミナーや,講義・事例検討による公衆衛生セミナーの開催状況を報告。さらに,2019年1月には抗菌薬の使用状況を他施設と比較できる感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)の運用が開始されたと説明し,医療機関の参加を呼び掛けた。氏は「数値目標達成だけでなく,アクションプランを将来につなげる多方面からの取り組みが今後必要」と締めくくった。なお,同院が事務局を務める感染症教育コンソーシアムから4月8日に,「アンチバイオグラム作成ガイドライン」と「中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス」が公開された。

 秋田大大学院の植木重治氏は,秋田県感染対策協議会が1983年の発足以来35年間で71回の感染対策講習会を行ってきた実績を紹介した。2010年には,地域全体を病棟と見立てたオンデマンドのサーベイランス「Akita-ReNICS」を秋田大中心に構築している。この他,グラム染色研修会や市民向け啓発行事の開催など長年のAMR対策により,2018年度第2回薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議議長賞を受賞したと報告した。

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