大麻抽出製剤が変える難治てんかん医療事情(太組一朗)
寄稿
2019.04.29
【視点】
大麻抽出製剤が変える難治てんかん医療事情
太組 一朗(聖マリアンナ医科大学脳神経外科学准教授/聖マリアンナ医科大学神奈川てんかんセンター副センター長)
2018年6月,ドラべ症候群,レノックス・ガストー症候群に対する治療薬として,大麻抽出物〔カンナビジオール(Cannabidiol;CBD)〕から製造された抗てんかん薬Epidiolex®がFDAから認可され,同年11月に米国で販売開始となった。販売開始翌月に開催された米国てんかん学会では,Epidiolex®の臨床応用データが華々しく報告され,難治てんかん治療が大きく動いたことを実感した。
CBD製剤はドラべ症候群(国内患者数約3000人),レノックス・ガストー症候群(国内患者数約4300人)の発作回数逓減に有用であることが近年示されている1, 2)。いずれも乳児期・小児期に発症する非常に難治なてんかん(てんかん性脳症)だ。しかし日本では,大麻取締法による規制が障壁となり導入は難しかろうとの雰囲気に,米国の気運の高まりとの乖離を感じた。
大麻抽出製剤の国内治験開始は令和時代へのレガシーとなるか?
2019年3月19日の「参議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会」における秋野公造参議院議員の質問に対して,厚労省の森和彦審議官から「現行の大麻取締法では患者への施用は禁止されているが,本剤については大麻研究者である医師のもと,厚生労働大臣の許可を受け,治験の対象とされる薬物として国内の患者に用いることは可能であると考える。ただし,施用は適切な治験実施計画に基づいた対象の患者に限る」と画期的な答弁がなされた。この答弁は,本邦における大麻抽出物を主成分とした抗てんかん薬の国内治験への道が開けた瞬間であった。
WHOからも薬物依存に関する専門委...
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