医学界新聞

2019.04.15



STROKE 2019開催
脳卒中と循環器病克服5か年計画の進捗を報告


 第44回日本脳卒中学会学術集会(会長=東京女子医大・北川一夫氏),第48回日本脳卒中の外科学会学術集会(会長=岐阜大大学院・岩間亨氏),第35回スパズム・シンポジウム(会長=秋田県立脳血管研究センター・石川達哉氏)の三学会によるSTROKE 2019が,3月21~23日,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて開催された。共通テーマは「進化を遂げた脳卒中医学・医療の今後の展望――次世代へのメッセージ:We can treat stroke」。本紙ではシンポジウム「脳卒中と循環器病克服5か年計画」(座長=京大・宮本享氏,東大・小室一成氏)の模様を報告する。


 日本における脳血管疾患と循環器病による死者数の合計は,第1位の悪性新生物に匹敵し,保健対策が重要な疾病といえる。本計画は2016年12月,日本脳卒中学会と日本循環器学会が連携し,「5年で脳卒中と循環器病の年齢調整死亡率5%減」「健康寿命延伸」を2大目標として,人材育成,医療体制の充実,登録事業の促進,予防・国民への啓発,臨床・基礎研究の強化を5戦略事業に掲げスタートした。

 2018年12月には「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(以下,基本法)が成立。本計画策定や基本法成立に関与した5人の演者が,5か年計画の進捗と今後の施策を報告した。

脳卒中・循環器病対策はどう変わるのか

 初めに,「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート」策定の背景と実情を帝京大の寺本民生氏が解説した。脳卒中と循環器病は,生活習慣病を基盤とする動脈硬化に大きく依拠するため,糖尿病や心房細動などの原因疾患を包括的に管理する意義が高い。そこで本管理チャートは,実地医家が6段階のステップに従い診断・診療を進めることで包括的管理を実現できるよう2015年に設計された。2019年5月には,各学会の最新ガイドラインを反映し,高齢者診療を意識した改訂版が公表される予定。氏は「実臨床での活用,啓発活動で,脳心血管病予防へのさらなる寄与を期待したい」と語った。

 日本循環器学会は,人材育成として,新たに心不全療養指導士の認定を2021年春に開始する。同学会理事の斎藤能彦氏(奈良県立医大)は,「心不全診療では多職種の連携が不可欠であり,そのチームの中心的な役割を果たす人材育成が目標」と展望を語った。

 他方,本計画の戦略の一つである登録事業の促進の観点からは,日本の心不全に関するコホート研究には悉皆性の高い研究がいまだないことに言及。すでにAMEDの支援を得て1万人規模のコホート事業を開始しており,2019年4月以降に解析が始まる見通しを述べた。

 東北大の冨永悌二氏は,「...

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