MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2019.02.04
Medical Library 書評・新刊案内
兼本 浩祐 著
《評者》池田 昭夫(京大大学院特定教授・てんかん・運動異常生理学/日本てんかん学会理事長)
臨床てんかん学の面白さ,重要さを実感できるハンドブックという名の単著の名著
医学書院から,このたび,愛知医大精神科教授の兼本浩祐先生による『てんかん学ハンドブック 第4版』が,前版から6年の期間を経て出版されました。本書は1996年に初版が出版され,その後2006年に第2版,そして第3版が2012年に出版されました。
実は,私は6年前の本書第3版の書評を記す大変光栄な機会を賜り,今回もその機会を賜り大変光栄な限りでまた大変うれしく思います。そのおかげで,今回「兼本てんかん学」のハンドブックがいかに新しく改訂されたか,いかに兼本教授が細部にまで心血を注がれているかを一部でも垣間見ることができたように思いました。
2012年から2018年の過去6年間は,臨床てんかん学では,大変大きな話題がいくつもありました。「自己免疫てんかん」という新しい病態の出現,高齢者てんかんの増加,新規抗てんかん薬が続々と上市されたこと,2017年に国際抗てんかん連盟からてんかん発作とてんかんの新分類が提言されたこと,ケトン食療法の見直し,脳刺激療法の臨床導入など,枚挙にいとまがありません。
本書ではこれらを系統立てて大変わかりやすく解説してあり,最新の情報をたやすく身につけることのできる,てんかん学成書となっています。その大きな特徴を3点紹介したいと思います。
1つ目は,本書が兼本教授の単著であることです。単著の特徴は,単独の著者が全体を綿密に構成かつ俯瞰して,あるポリシーを持って一貫した内容に仕上げられることです。それによって読者は一貫した内容をその本から学ぶことができます。それはもちろんその著者がこの分野に最も精通した専門家でなければ不可能で,また同時に一貫した筋の通った考え方(臨床的哲学)がなければ逆に浅薄な内容となってしまいます。その点において,兼本教授は,精神科の立場から,学問的にも臨床的にも長い経験と豊富な知識で日本の臨床てんかん学の分野の最も傑出したリーダーのお一人です。
2つ目は,ページ数も前版の300ページから400ページへと一気に増えました。特に新しい章として第8章「器質因」が設けられています。従前はてんかんの病因は詳しく検査しても3分の1程度しかわからないとされてきましたが,前述のような各種病態がわかるようになり,それをわかりやすくまとめられています。
3つ目に,系統書でありながら,大変読みやすい理由として,「事例」「臨床メモ」「視点・論点」といったコラムが,本版でも豊富に取り上げられていることが挙げられます。これはサイドメモ,トリビア,兼本語録として,本文の理解を補う,少し視点を変えて内容を語り掛けてくれます。
本書の序で,兼本教授が初学者の皆さまに対して,第1~3章をまずは読んでてんかんの概略をつかむという本書の使い方を記してくださっています。またてんかん診療を専門として開始された皆さまは,それに加えて第9章の「診療アラカルト」を参考にすることで,日常診療のピットフォールになりがちな内容も網羅できるものと確信します。
最後に,本版では,ガストー教授の言葉「忘れてならないのは てんかんは(中略)科学ではないことです。それは臨床によってしか理解することができないことがらなのです」を紹介されています。これはまさにこの本で示されている内容そのものです。装画にも患者さんの絵画作品が示され,臨床医学は実証的学問であり臨床の事実を尊重されている兼本教授の思いを感じる次第です。本書を手に取ってみると,臨床てんかん学の面白さ,重要さを実感できることと思います。
A5・頁446 定価:本体4,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03648-1
岩田 充永 著
《評者》今 明秀(八戸市立市民病院院長)
ERの解説書ではなくERの格言
山中克郎先生の『医学生からの診断推論――今日もホームランかっとばそうぜ』(羊土社),林寛之先生の『Dr.林の当直裏御法度――ER問題解決の極上Tips 90』(三輪書店)など,売れている本は,中身が濃くて表紙が派手だ。そういえば,最近の若手医師向けの医学書はみんな派手色彩の表紙と売り文句(すいません,私のもそうです),それに厚い。本書は白地に黒の明朝体のタイトル『ERのクリニカルパール』が上品。はやりの売れ筋本とは明らかに体裁が違う。サイズはB6判200 gとスクラブポケットに収まるサイズ。行間が広いので寝転がって読んでもスラスラ読めるし,当直の合間に読破できる。薄いから枕にはならない。内容は160項目と充実している。これは売れるぞ。
おっと,表紙と目次の評価だけならAmazonでも事足りますね。では,内容を吟味しましょうか。①収縮期血圧120 mmHg以下+脳梗塞症状では,大動脈解離を検索すること。tPA投与に向けて慌ただしく動いているときに「人間は急かされると判断ミスをする」。解離には左片麻痺・右血圧低値が多い。②昏睡状態の患者は嘔吐で窒息する。自発的側臥位ができないからだ。「例外なく,どのような場
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