MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2018.12.10
Medical Library 書評・新刊案内
《ジェネラリストBOOKS》
よくみる子どもの皮膚疾患
診療のポイント&保護者へのアドバイス
佐々木 りか子 編
《評者》横田 俊一郎(横田小児科医院院長)
外来診療の理念が伝わる写真豊富な一冊
発疹は誰が見てもわかりますので,お子さんの身体をくまなく見ているお母さん方にとって,とても気になる症状の一つです。まずは「かかりつけの小児科で相談してみよう」ということになり,小児科外来では発疹を主訴に受診する患者さんがたいへん多いのですが,頭を悩ますことも少なくありません。視診という簡単な方法で全身的な疾患などさまざまな疾患を診断できるという点で,皮膚の診療は大変魅力的です。しかし,私たち小児科医には原因のわからない発疹も多く,そのようなときの神頼みで皮膚科医へ診察をお願いすることになります。しかし全てを紹介するわけにもいきませんので,少し勉強してみようと誰もが考えるのです。
小児の皮膚疾患に関する教科書やアトラス,雑誌の特集などは今までにもたくさん出版されていて,きっと皆さんの本棚にも何冊かの本が並んでいると思います。しかし,なかなか「これ一冊あれば」という本に出合えていない医師が多いのではないでしょうか。そんな方にうってつけの一冊として紹介したいのが本書です。
本書は皮膚科臨床の第一線にいる3人のベテラン女性医師が執筆しています。まず感心したのは全体の構成です。皮膚疾患については細かく分類されている教科書が多く,そこでまずつまずくことが多いのですが,本書は子どもの診療でよく遭遇する皮膚疾患を「スキンケア」「湿疹・皮膚炎」「感染症」「その他の皮膚疾患」「あざ・色素異常」と非常に単純で明快に項目立てしています。私たち小児科医が知りたいことを漏らさず,しかもわかりやすく分類されているのがまず気に入りました。
そして,第1章は「保護者に伝えるスキンケア」です。皮膚の基本から始まって,保湿薬や日焼け止めの使い方,ステロイド外用薬の塗り方や投与量の目安がわかりやすく書かれています。ステロイド外用薬の安全な総使用量が書かれているのも役立ちます。第2章以降は疾患について書かれていますが,2~4ページ程度でまとめられたものが多くて大変読みやすく,初めに好発部位が描かれている図が掲載されています。そして「臨床のポイント」が冒頭の赤く囲まれた欄に記載されており,これを読むだけでも勉強になります。また,写真がとても見やすく,コンパクトな本の割にきれいなカラー写真が多いことが特徴の一つです。
病態・治療法も簡潔にわかりやすく記載されていて,非常に読みやすいと感じます。また,何といっても最後に「保護者への説明のポイント」が書かれているのが外来診療をしている医師には魅力です。子どもの視点,保護者の視点から説明されており,本書を貫いている理念がここにあると感じます。
診察机の上に置いていたら,私のクリニックを手伝い始めた小児科医の娘に「この本,いいね!」と危うく持っていかれそうになりました。子どもの皮膚疾患の診療に当たっている全ての医師にお薦めしたい一冊です。
A5・頁256 定価:本体4,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03620-7


八幡 紕芦史 編著
竹本 文美,田中 雅美,福内 史子 著
《評者》飯原 弘二(九大大学院教授・脳神経外科学)
内容を理解し信頼してもらえるかはデリバリーの技術にかかっている
医師の日常は,臨床カンファレンスから学会発表,研究成果発表会など,プレゼンの機会に事欠きません。若手の医師にとっては,初の全国学会での口演発表,中堅医師では,シンポジウムの発表,共催セミナーでの口演が当たると,大変うれしいものです。また公的研究費の獲得や公的なポストへの昇進など,プロフェッショナルとしてのキャリアをアップする上でもプレゼンの重要性に異を唱える人はいないと思います。しかし,いかに仕事内容が素晴らしくても,聴衆に効果的に伝える努力を私たちは十分しているでしょうか? 今から思いますと,私も若いころ,かなり独り善がりなプレゼンをしていたように思います。
このたび医学書院から,医療者向けに『脱・しくじりプレゼン』が刊行されました。編著者は,名著『パーフェクトプレゼンテーション』(生産性出版,1995年)で有名な八幡紕芦史氏です。私自身,プレゼンの基本を八幡氏から学んだ一人です。本書は,多忙な臨床医や研究者向けに,プレゼンの極意を,マンガと丁寧なレクチャーでビジュアルに解説しています。効果的なプレゼンには,事前の情報収集と分析がまず必要なこと,聞き手に当事者意識を持たせることを示して,さまざまな場面での失敗の要因を分析しています。
デリバリーとは,まさに伝えるテクニックです。内容を聴衆に理解してもらい,さらに信頼してもらえるかは,このデリバリーの技術にかかっています。また,研究費の獲得や公的なポストへの昇進でのプレゼンでは,プレゼン後の質疑応答が,より大切になってきます。この質疑応答の成否は,深い意味では,プレゼンした内容が,いかにあなたの実体験に基づいているかにかかっています。
本当に身についた知識や内容であれば,聴衆は本当に理解して共感してくれると思いますが,プレゼンの目的や聴衆はさまざまだと思います。本書は,さまざまな局面で,「しくじらない」ためのノウハウを満載しています。Practice makes perfect ! 皆さん,本書をひもときながら,ぜひ多くのプレゼンをしてください。その後本書を読み返すと,さらに大きな発見があると思います。
A5・頁192 定価:本体2,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03191-2


青野 敏博,苛原 稔 編
《評者》加藤 聖子(九大教授・婦人科学産科学)
臨床の問題から文献を調べ上げ,議論を重ねてまとめられた書
青野敏博・苛原稔編『産婦人科ベッドサイドマニュアル 第7版』が刊行された。1991(平成3)年の初版より27年の間,研修医・実地臨床医に愛されてきたマニュアルである。評者自身は第5版より利用させていただいている。ちょうど良い大きさ・量であり,患者さんに説明するために知りたいこと・処方や処置をするために必要な知識が的確にまとめられており,10年以上評者の診療のよりどころとなっている。
青野先生の「序文」,苛原先生の「第7版の刊行に寄せて」の内容を読むと,一冊の本が完成するまで,徳島大産科婦人科の教室員が,日頃の臨床現場から問題点を抽出し,資料・文献を調べ上げ,議論を重ねまとめるという姿勢を初版よりずっと貫かれており,まさに教室員の汗と努力の賜物である。
この本は医療の進歩,変化に合わせて改訂されているので,われわれは最新の産婦人科医療の知識を得ることができる。第7版に新たに加えられたものとして,例えば,無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)の広まりを受けて,「胎児染色体検査の適応と診断」が解説されている。また,最近のトピックである「女性アスリート診療の留意点」も取り上げられている。
特に今回,評者が着目したのは「Side Memo」のコーナーである。周産期・内分泌・婦人科腫瘍・女性医学の最新の情報が簡潔にまとめられており,各分野の専門医試験にも十分役立つ内容である。
この本の良さは手に取って,ページをめくってもらうとよくわかる。知っておきたい疾患の発症率やリスク発生率などの統計学的数値,診断のフローチャート,治療のレジメンなどが,視覚的に頭に入る構成になっている。
産婦人科の基礎的知識を得たい初期研修医,産婦人科専門医試験を控えた後期研修医,各サブスペシャリティの専門医など,産婦人科医療に携わる全ての人にお薦めしたい本である。
B6変型・頁536 定価:本体6,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03455-5


新津 守 著
《評者》江原 茂(岩手医大教授・放射線医学)
質の高い画像がさらに増え,新たな章も加わった改訂版
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