看護の立場から見た医師の看取り(小林光恵)
寄稿
2018.12.10
【視点】
看護の立場から見た医師の看取り
小林 光恵(看護師/作家/エンゼルメイク研究会代表)
20年ほど前,新聞の投書欄に,ある青年の怒りの文章が載りました。彼の祖父の死亡診断を行った医師が,PHSで時刻を確認し「○時○分」と告げたことに対し,何年たっても怒りが収まらないという内容です。「大好きな祖父の死亡診断時刻を,その医師はまるでゲームでもしているかのように,軽々しく確認した」と書かれていた記憶があります。その青年が小学生くらいのころの出来事と思われ,当時の子どもにとって,PHSはゲームを連想するものだったのかもしれません。
死亡診断時やその直後の場面の医師や看護師の立ち居振る舞いにおいて,意外な点にご家族が不満や怒りを持つケースは少なくありません。筆者が所属するエンゼルメイク研究会において検討した事例を,以下に挙げます。
①死亡退院となった際に,主治医が出口に見送りに来なかった。
②点滴やチューブ類,医療器材などを,亡くなった途端にさっさと外した。
③臨終後に頭髪のシャンプーを行う際,汚水の受け皿として紙オムツが使用された(「おしもに使う紙オムツを,頭に使うなんて」)。
いずれも,別の医療者が全く同じ対応をしたとしても,ご家族が不満や怒りを覚えないこともあります。その違いは,「看取りの場に居合わせた医療者がご遺体を大切に扱い,ご家族の心情を配慮している」という感情をご家族が持てるか否かによります。
では,前述のケースで,医師や看護師はどのように対応すればよかったのでしょうか。代案を示します。
①「緊急の仕事が入り,どうしても見送れずに申し訳ありません」との伝言を見送りに行く看護師に頼む。
②点滴やチューブ類はご家族にとって治療や延命の可能性を象徴する場合があることを踏まえ,ご家族の了承を得てから外す。あるいは,「これから外します」と声を掛ける。
③紙オムツは清潔...
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