医学界新聞

寄稿

2018.11.19



【視点】

アカデミアから提案する東京五輪の救急医療体制

横田 裕行(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野教授/同大付属病院高度救命救急センター長)


 2020年,国際的イベントである東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京オリパラ)が「おもてなし」や「レガシー」をキーワードに開催される。4年に一度の国際的競技大会だけに,開幕前の聖火リレーや前後の各種会議を含めると,大会期間中以外にも複数のイベントが同時多発的に数か月にわたって開催されることになる。医療に携わるわれわれは,日常の救急を含めた医療体制の維持を前提とし,関係者や観客などが多数集まる開催会場周辺の救急医療体制の整備も考慮しなければならない。さらに,不安定な国際情勢に鑑み,テロ発生時の医療対応も考慮する必要がある。

 こうした認識のもと,東京オリパラの医療体制を学術的な見地から提案する連合体「2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体」(以下,コンソーシアム)が2016年4月に,日本救急医学会が中心となって組織された。

 当初は救急医療にかかわる日本救急医学会,日本臨床救急医学会,日本集中治療医学会,日本外傷学会,日本集団災害医学会(現・日本災害医学会),日本中毒学会,日本熱傷学会,日本救急看護学会の8学会と,東京都医師会を加えた9団体で活動を開始した。

 さらに2017年度からは,当時のコンソーシアムを中心とした厚労省研究班が組織され,各学術団体の専門性を生かした調査・研究が開始された。

 具体的には,日本救急医学会は大会期間中,特に会場周辺の効率的な医療資源の配分,救急隊や救急車の配置,会場周辺の医療機関への搬送シミュレーション,日本臨床救急医学会は熱中症対策,日本集中治療医学会は会場周辺における集中治療室の受け入れ状況,日本外傷学会は銃創や爆傷に対す...

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