医学界新聞

2018.10.29



2017年『胃と腸』賞授賞式


梅野淳嗣氏
 2017年『胃と腸』賞の授賞式が9月19日,笹川記念会館(東京都港区)で開催された早期胃癌研究会の席上にて行われた。本賞は『胃と腸』誌に掲載された論文から,年間で最も優れた論文に贈られるもの。2016年まで,雑誌『胃と腸』は白壁賞と村上記念『胃と腸』賞の2賞を設けていたが,この2賞が統合され,このたび新たに『胃と腸』賞として発足した。

 統合後初めてとなる今回は,対象論文155本の中から,梅野淳嗣氏(九大大学院)らによる「非特異性多発性小腸潰瘍症/CEASの臨床像と鑑別診断」[胃と腸.2017;52(11):1411-22.]が受賞した。

非特異性多発性小腸潰瘍症の臨床像と鑑別診断法を検討

 梅野氏らはこれまでに,非特異性多発性小腸潰瘍症はプロスタグランジン輸送体をコードするSLCO2A1の変異によることを明らかにし,CEAS(chronic enteropathy associated with SLCO2A1 gene)という新たな呼称を提唱。受賞論文ではCEAS 45症例を検討し,その臨床像を報告した。検討の結果,小腸病変の形態学的特徴として,終末回腸を除く回腸を中心に,輪走ないし斜走する比較的浅い開放性潰瘍の多発が腸間膜付着側と無関係に認められた。性別による比較では,胃病変は女性に有意に多く,ばち指・骨膜症や皮膚肥厚といった肥厚性皮膚骨膜症の所見は男性に有意に多かったとし,鑑別診断の際は,小腸病変の評価に加えて上部消化管病変や消化管外徴候の評価と,既報のSLCO2A1の変異検索がCEASの診断に必要と結論付けた。

 選考委員の松本主之氏(岩手医大)は,梅野氏が世界に先駆けて非特異性多発性小腸潰瘍症の原因遺伝子を同定したことに触れ,「形態学と遺伝学が一体となった貴重な論文」と講評した。受賞のあいさつで梅野氏は,「故・岡部治弥先生(北里大名誉教授)が非特異性多発性小腸潰瘍症の疾患概念を発表してから約50年。原因遺伝子はわかったが,病態は明らかになっていない。今後も努力を重ね,治療法につながる新知見を発見したい」と抱負を語った。

*授賞式の模様は『胃と腸』誌(第53巻13号)にも掲載されます。

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