医学界新聞

2018.10.22



Medical Library 書評・新刊案内


透析ハンドブック 第5版

小川 洋史,岡山 ミサ子,宮下 美子 監修
新生会第一病院在宅透析教育センター 編

《評者》佐藤 久光(増子記念病院/日本腎不全看護学会理事長)

「生きた経験と知恵」が結集!「透析ライフ」に必要な項目を網羅

 『透析ハンドブック 第5版』を手にしました。私は,この書籍の書評を書かせていただくことを,大変光栄に思っています。

 一般に,医療関係の書物は,それを必要とする対象が限局されるものです。「透析」ということに関しては,患者さんやご家族を対象とするものもあります。医療従事者向けに書かれた冊子も沢山あります。しかし,その両者にとって,必要にして十分な内容を網羅した冊子というのはあったでしょうか。

 私は,この「ハンドブック」を,そんなあり得ないことを実現させた書物として興味深く読ませてもらいました。

 本書の最大の特徴は,「患者さんとそのご家族や周囲の方々の生活の質(QOL)をどう高めることができるのか」という視点が貫かれているという点です。腎臓の働き,慢性腎臓病(CKD)の経過,腎機能が廃絶した後の生活の仕方,透析治療の方法や薬物,運動,食事,さらには社会資源の活用の仕方まで,「透析ライフ」にとって必要な項目が全て網羅されているのです。

 そして,その目的のために,医療従事者(とりわけ看護師)は何ができるかということです。ですから,具体的にならざるを得ないのです。「良い看護か悪い看護か」などを評価するのは受ける側です。それは,具体的な行為として表現されます。どんなに立派な理論も「上手な穿刺」には勝てないのです。本書では,実際に行うべき支援の中身が,具体的で実にわかりやすく,図表を交えて記述されているのです。

 なぜ,このような書物ができあがったのか。それは一朝一夕にできることではありません。透析療法の黎明期からかかわった人々が,患者とのかかわりの中から得られた「生きた経験と知識」を結集して作り上げた書物なのです。監修された先生方の高い能力と情熱が伝わってきます。そして,時代の変化に合わせ,CKD対策や療法選択の問題にも触れ,版を重ねてきたのです。

 この「ハンドブック」は,患者さんやそのご家族の手元にも届くと考えなければなりません。とすると,「指導」する側の看護師たちは,「学んでいる患者」「よく理解している患者」もいることを想定して臨む必要があります。

 私たちは,患者さんたち以上によく学んでおくことが必要となります。そして,本書の内容を一通り理解しておけば,透析における看護は標準以上のレベルに到達します。そこからまた新しい考え方を加えていくことが可能となります。そういう意味では,本書は,私たちが成長することを強要する書物という性質も持っています。

 うかうかしていられません。私もしっかり読んで,学んでいかなくてはとつくづく思いました。

B5・頁240 定価:本体3,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03447-0