時代に即した研修をどう構築するか(戴哲皓,市来陽子,山本和輝)
寄稿
2018.09.10
【寄稿】
時代に即した研修をどう構築するか
全米チーフレジデント会議の学びと実践から
戴 哲皓(聖路加国際病院内科)
市来 陽子(聖路加国際病院内科)
山本 和輝(聖路加国際病院内科)
2018年3月に米国テキサス州で「全米チーフレジデント会議(Chief Residents Meeting)」が開催され,今年も全米から1000人近くの次期チーフレジデントが集まりました。当院からも前年までと同様,2018年度チーフレジデントの私たち3人が参加しました(写真1)。
写真1 全米チーフレジデント会議の会場にて(左から山本,市来,戴の各氏)。 |
当院は,1967年にレジデント制度を導入し,米国のチーフレジデント制度もいち早く取り入れました。当院のチーフレジデントは,研修医の採用,評価・指導などの教育を行う一方で,研修プログラム・病院・各種委員会の運営などの病院管理にも深く携わっており,Leader,Educator,Counselor,Mentor,Administratorとしての資質が求められます。
私たちは2日間にわたる会議の中で,受講者全員が参加するセッションやディスカッション形式の講義などさまざまなプログラムを受講しながら,それらの資質をいかに養うかを学び,またそこで得た多くのtipsを当院にいかに持ち帰るかを議論してきました。初めに,日米共に現在ホットトピックで,取り上げるセッションも多かった「burnout(燃え尽き症候群)」と,それに対する当院の取り組みを紹介します。
制度刷新と新たな取り組みで,レジデントのサポート拡充へ
Burnoutは精神的・心理学的症候群の一種で,主にストレスが原因で個人の意欲や機能が損なわれてしまうことです。米国では長期労働時間による医療過誤に伴い,80時間/週以上の労働規制が1989年にニューヨーク州で,2003年に米国全体で定められました。近年の日本の流れも米国同様に,レジデントをはじめ,医師の労働時間短縮が求められるようになりました。米国では労働規制に関する研究も既になされており,レジデントに対する労働時間の削減がburnoutの低下につながったとする報告が存在する一方,労働時間削減後もburnoutは消滅せず,かえって患者満足度やレジデントの診療能力が低下したとの報告もあります。Burnoutは仕事のやりがい・充実感・情熱,他者からの信頼や他者との関係構築などが損なわれることでも発症すると考えられており,これを受け米国では,サポート体制の充実を重要視するようになりました。
そのため,当院では労働時間のみに目を向けるのではなく,サポート体制の改善・向上に関しても工夫をしてきました。その一つがメンタリング制度です。メンタリング制度を10年以上前から取り入れている当院では,ジュニアレジデント(初期研修医)一人ひとりのモニタリングを経験豊富な先輩医師が行っています。年に複数回のミーティングを重ね,自身のキャリア設定と今後の目標を共に考え,傾聴し,助言などを行います。今年度から従来のジュニアレジデントのメンタリングを徹底するとともに,病棟管理の大きな役割を任される3年目の内科シニアレジデントにも本制度を適用させ,より全面的なレジデントケアに発展させました。
また,リトリート制度も今年度から開始しました。当院の内科研修では,昨年度から月1回シニアレジデントが集まり,病棟で生じた問題,悩み,改善法など...
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