医学界新聞

2018.09.10



第50回日本医学教育学会開催


吉澤靖之大会長
 第50回日本医学教育学会が8月3~4日,「知と癒しの匠を創造する」をテーマに吉澤靖之大会長(東医歯大)のもと,東医歯大(東京都文京区)で開催され,1300人を超える参加者が集った。本紙では,シンポジウム「医師育成のための初期臨床研修の在り方――平成32年度の見直しに向けて」(座長=岩手県立中央病院・高橋弘明氏,京大・小西靖彦氏)の模様を報告する。

臨床研修制度は医師の学習にどのように寄与できるか

 医師臨床研修制度は2004年度の必修化後は5年に一度見直しが行われ,新たに見直された制度が2020年度から運用される。初めに厚労省の岡部渉氏が2020年度からの変更点を概説した。今回は,卒前・卒後の一貫した医師養成を意識した到達目標・方略・評価の整理やプログラム責任者養成講習会受講の義務化,地域医療の安定的確保をめざした制度の見直しなどが行われる。2025年度までに臨床研修医の募集定員倍率を1.05倍まで段階的に圧縮しつつも,診療義務が課された地域において地域枠学生が適切に勤務できるよう,都道府県ごとに新たに指定する地域密着型臨床研修病院(仮称)で「地域枠等限定枠」を設定し,地域枠の一定割合を上限に一般学生とは分けて選考できるようにするという。各都道府県がめざす医療提供体制の構築を促進するため,国が一定基準を示した上で都道府県が病院ごとの定員を設定可能にする点も紹介された。今年度中にも,募集定員設定等の都道府県移管の施行通知が発出される予定だ。

 医師養成では,どの大学を卒業しどの病院で臨床研修を行っても基本的な能力を修得できる教育・仕組みが重要になる。卒前教育を行う大学の立場から石原慎氏(藤田保衛大)は,「送り出した卒業生が臨床研修開始時相当の実力が確かにあるかを,臨床研修病院の指導医からフィードバックしてほしい」と意見を述べた。大学と臨床研修病院の間には卒業生の能力評価基準や到達目標に少なからずギャップが存在し,それをフィードバックにより埋めるためだという。フィードバック評価の制度化の他,研修機関の第三者評価を実施することで,卒前・卒後教育機関双方の質が担保された医師養成を,今後安心して行えるとの見方を示した。

 厚労省「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」委員として臨床研修制度の見直しに携わった清水貴子氏(聖隷福祉事業団)は,医師の生涯学習において重要になる臨床研修病院の役割について述べた。氏は,2020年度の見直しと「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂が同時期に行われ両者の相談により卒前・卒後教育の一貫性が図られたことで,発達段階に応じた共通の目標を持ちながら学習すべき資質や能力を繰り返し学べるとの期待を示した。研修医指導を通じて研修医だけでなく指導医自身の成長にもつながると指摘。「臨床研修病院が医学教育に携わる千載一遇のチャンス」と語り,臨床研修病院は大学と連携をより強めて医師の生涯学習に寄与すべきだと締めくくった。

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