MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2018.08.06
Medical Library 書評・新刊案内
ほんとうに確かなことから考える妊娠・出産の話
コクランレビューからひもとく
森 臨太郎,森 享子 著
《評者》越智 博(愛媛県立中央病院総合周産期母子医療センター長)
妊産婦さん・ご家族とのコミュニケーションツールに
各医学会の診療ガイドラインは,複数の治療選択肢の評価に基づいて,患者ケアの最適化のための重要な医療について,最良の結果をめざした推奨を提示し,患者と医療者の意思決定を支援します。また,最新の臨床研究に基づいた質の高い診療がどのようなものかを明らかにすることによって,患者・家族とのコミュニケーションツールとしての役割を果たし,専門医のみならず,医療者間においても推奨される診療がどのようなものであるかをお互い理解することに貢献するものでもあります。
一方,1992年に英国で設立された「コクラン」は,臨床研究を対象に系統的レビュー(コクランレビュー)を作成し,「根拠に基づく医療(EBM)」を世界に普及してきました。臨床上の疑問を検討した論文を網羅的・系統的に検索し,その結果を統合する系統的レビューを確立しました。これまでに130か国以上の研究者・医療者により,系統的レビューが作成され,臨床上の意思決定はもちろん,世界各国の医療政策に影響を与えています。コクランレビューは医療や健康の分野で最も信頼性が高い情報源で,医療の専門分野でのガイドラインと同様の役割を果たします。
国立成育医療研究センター政策科学研究部はEBMの推進を行っている日本の先端施設です。部長の森臨太郎先生は,コクラン日本支部であるコクランジャパン代表でもあり,この信頼性の高いコクランレビューの中から,妊娠・出産にかかわるものを集め,本書で紹介しています。妊産婦の過ごし方や医療従事者のケアについて産科医療者・妊産婦・その家族とのお互いのコミュニケーションツールとなるEBMに基づいたこれまでにない素晴らしい内容でいっぱいです。
産科医,助産師,看護師はもちろん,妊娠・出産を迎えるに当たって妊産婦さんとそのご家族にも,この書籍をお薦めしたいと思います。EBMに基づいた知識から妊産婦さんにとってより良い診療・ケアを考えるに当たって非常に有用であるコクランレビューを,ぜひ,お役立てください。
A5・頁128 定価:本体2,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03542-2


山内 豊明 著
《評者》倉原 優(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)
快刀乱麻の聴診本
私は研修医のころ,受け持った患者さんの呼吸音を聴かせていただこうと思い,なけなしの金をはたいて買った新しい聴診器を持って,呼吸器内科病棟をウロウロしていた。そんなとき,喘息発作の男性の担当医になった。私は彼の胸にすかさず聴診器を当てて,「グォー,グォーという音が聴こえます」と指導医に伝えた。
また,私自身が指導医として研修医を受け持ったころ,特発性肺線維症の患者さんから特徴的な音が聴取できるだろうと思い,研修医に聴診器を当てさせた。彼は,その音を聴いて「パチパチと聴こえます」と答えた。
これらの聴診所見は,前者が低調性連続性副雑音(rhonchi:ロンカイ)で,後者が細かい断続性副雑音(fine crackles:ファインクラックル)と呼ばれている。私のような呼吸器内科医にとってはそれなりに名の知れた所見であるが,これらの用語は残念ながらいまだに全ての医療従事者に浸透していない...
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