医学界新聞

2018.08.06



第24回日本心臓リハビリテーション学会開催


 第24回日本心臓リハビリテーション学会学術集会(会長=順大・高橋哲也氏)が7月14~15日,「ストップCVD――心臓リハビリテーションがつなぐ医療・介護・地域」をテーマに,医師・理学療法士など6000人を超える参加者を集め,パシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。本紙では,終末期の心臓リハビリテーション(以下,心臓リハ)に携わる理学療法士らが発表したシンポジウム,「終末期における心臓リハビリテーション」(座長=ゆみのハートクリニック・弓野大氏,九大病院・肥後太基氏)の模様を報告する。


終末期心臓リハにおける理学療法士の役割を検討

高橋哲也会長
 初めに登壇した川端太嗣氏(兵庫県立尼崎総合医療センター)は,終末期心不全のリハに求められる理学療法士の役割を述べた。循環器疾患は終末期でも治癒の期待を抱く患者は少なくない。適切なリハの実施とともに,患者の現状や未来に対する思いやニーズをくみ,それらを他職種と共有しながら患者の個別性に近づくことが求められると指摘した。

 増悪と寛解を繰り返す心不全は予後予測が難しい。緩和ケアの開始直前まで積極的治療が行われることが多く,医療者間でも治療方針の意見が食い違うこともある。理学療法士の出見世真人氏(三菱京都病院)によると,同院は毎週開催の心不全症例カンファレンスや,2016年に組織した循環器緩和ケアチームによって多職種で治療方針を検討している。終末期の患者に対し理学療法士は,「予後改善」から「どう過ごしてもらうか」へと対応をシフトし,「患者のデマンドに合わせたリハの継続が責務」と強調した。

 心不全患者に対し,人生の最終段階におけるリハをいつまで施行すればよいか,そのコンセンサスは得られていない。循環器内科医の水野篤氏(聖路加国際病院)はDPCデータから,2016年9月~17年8月までに185施設に入院した心不全患者計2万9746人を検討。院内死亡は2469人(8.3%),うち死亡退院前7日以内に心臓リハを施行したのは731人(29.6%)であった。これは心臓リハを施行している死亡患者の7割に上り,既に心臓リハを開始している患者では亡くなる直前までリハビリが行われていると判明した。心臓リハをいつ導入すべきか,実施期間にどのようなことをすべきかなどを検討すべき段階に来ていると提起した。

 京都橘大の安福祐一氏は,集中治療領域のセラピストに期待される役割を述べた。重症心不全患者の治療には早期リハと,治療と並行した緩和ケアが重要になる(Circulation. 2012[PMID:22392529])。セラピストは,重症心不全患者のPICSや廃用症候群の予防・改善だけでなく,患者・家族の意思決定支援やQOL向上に貢献できる可能性があると指摘し,有効性を示すエビデンスの集積が必要と強調した。

 植込型補助人工心臓(VAD)装着下の心臓リハの課題を紹介したのは理学療法士の樋口妙氏(九大病院)。VAD治療は画期的な一方,感染症や脳血管障害などの合併症の考慮や,在宅での機器管理,介護者によるサポートが必要になると説明した。再入院を契機に入院が長期にわたり,本人・家族の終末期における意思決定に葛藤が生じたVAD装着患者の例を踏まえ,VAD挿入前からACPを導入する意義や,多職種による意思決定の必要性を訴えた。

 訪問リハに携わる理学療法士の古田哲朗氏(ゆみのハートクリニック)は,終末期を在宅で生活する患者の「最後まで“動く”」をサポートした実例を報告した。終末期訪問リハの効果は不明確との課題もあるとされる。しかし,終末期は,医療者の思うニードよりも患者本人のデマンドをより重視すべきと強調し,患者の希望に対し「根拠を持って“許容”する」ことが医療者には求められるとの見解を示した。

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