第9回日本プライマリ・ケア連合学会開催
2018.07.09
第9回日本プライマリ・ケア連合学会開催
第9回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(大会長=三重大大学院・竹村洋典氏)が6月16~17日,「日本プライマリ・ケアの再出発」をテーマに三重県総合文化センター,他(津市)にて開催された。本紙では,同学会ワクチンプロジェクトチーム(PT)企画の教育講演「エビデンスに基づいたワクチン接種のために――Annual evidence up-to-date 2018」(座長=神戸大大学院・岩田健太郎氏)の模様を報告する。
竹村洋典大会長 |
ワクチン接種の知識を解説
続いて登壇した西岡洋右氏(西岡記念セントラルクリニック)は,帯状疱疹,ムンプス,インフルエンザの各ワクチンについて,新たな知見を元に臨床現場で扱う要点を紹介した。帯状疱疹は50歳以上で発症率が上昇することがわかっており〔IASR. 2013;34(10):298-300〕,米国の臨床試験では50~59歳で69.8%の予防効果があることから(Clin Infect Dis. 2012[PMID:22291101]),50歳以上の帯状疱疹発症予防に水痘ワクチン接種を推奨した。ムンプスウイルスによる難聴は後遺症が高い割合で残ることが日本耳鼻咽喉科学会の2015~16年の調査で明らかになっているため,唯一の予防方法であるワクチン接種(2回)を推奨。インフルエンザは集団免疫をつける重要性から,本人だけでなく周囲の家族や学校など広範な推奨が必要と強調した。
思春期女児におけるヒトパピロマウイルス(HPV)ワクチン接種後の多様な症状が社会問題となる中,最近の研究を紹介したのは兵庫医大の武内治郎氏。米国の調査では,接種後有害事象(AEFIs)の発生は10万人中53.9人,AEFIsのうち深刻なものは,全報告約2300万回の接種中772件(全AEFIs中6.2%)とされる(JAMA. 2009[PMID:19690307])。7つのランダム化比較試験の結果をメタ解析で統合した結果では,深刻なAEFIsの有意な増加は認められていない(Cochrane Database Syst Rev. 2018 [PMID:29740819])。国内の最近の調査でも,HPVワクチン接種と接種後の徴候の間に特に関連が認められなかった(Papillomavirus Res. 2018[PMID:29481964])。積極的な接種勧奨が差し控えられる状況の中,プライマリ・ケア医には,接種を受ける小児・思春期女児が抱く不安に対し,接種後の疼痛や失神など心身反応に配慮した対応が必要と述べた。
HPVワクチンの接種判断は現在,現場の医師と被接種者・家族に委ねられている。坂西雄太氏(佐賀大)は被接種者・家族への説明方法について,プライマリ・ケア医はまず,コクランレビューや厚労省が公開する指針などを把握すること。その上で,被接種者・家族から寄せられることの多い,効果,副反応,ワクチン以外の予防法の有無,いつ接種するか,しないかなどの不安や訴えに責任を持った情報提供と対応が必要と語った。
千葉大氏(Family Medical Practice Hanoi)は,日本で今後さらに周知や普及が望まれるワクチンとして,①髄膜炎菌ワクチン,②ポリオワクチン,③3種混合ワクチンの3つを概説した。①の髄膜炎菌は飛沫感染するため,寮などの集団生活や海外留学予定者,大規模イベント参加者には積極的に勧めたいと指摘。②のポリオワクチンは接種回数不足による抗体価の低下がわかっているため,長期免疫を与えるためにも就学期以降の追加接種を勧めたいとの見解を示した。③の3種混合ワクチン(D:ジフテリア,P:百日咳,T:破傷風)は2期以降,百日咳を防ぐP成分が含まれていないことから,2期接種では自費によるDTaP接種を推奨する他,新生児に接触する成人への積極的な追加接種を呼び掛けた。
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なお,同学会発行の「健康格差に対する見解と行動指針」が会期中に採択され,ウェブサイトで公開された。
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