医学界新聞

寄稿

2018.06.25



【視点】

患者に寄り添ったIVR看護の実践をめざして

野口 純子(厚生中央病院放射線科/看護師)


 IVRとはInterventional Radiologyの略で,日本語では画像下治療と訳されます。なじみのない方も,心臓カテーテル治療や脳血管内治療,動脈塞栓術などはご存じだと思います。それらの治療の総称がIVRです。IVRの多くは局所麻酔下で行われ,外科的手術と比較して低侵襲で治療を行うことができることや,新しい器具の開発や改良により,幅の広い疾患が対象となります。

 IVRにおける看護教育は,主にOJTによってなされています。しかし,多くの施設において,「一人でIVRの介助につける」ことが目標とされており1),「一人でIVRの介助につける」ようになった後の教育は本人任せになっているのが現状です。また治療の場ということもあって,「医師に言われたことさえしていればよい」という風潮もあり,医師の介助をただしているだけの施設も少なくありません2)

 しかし,IVRは局所麻酔下で行うため,患者は意識があるまま侵襲的治療を受けることになります。自分の全てを他者に託さなくてはならない状態に身を置き,かつ自分の身体の痛みや不安を常に感じながら治療を受けることは非常にストレスフルです。患者がこのような状況に置かれる中,果たして看護師は医師の介助だけでよいのか,もっと患者に寄り添った看護師の存在が必要なのではないかと考え,IVRに携わる看護師によって,2000年に「IVR看護研究会」3)が設立されました。

 IVR看護研究会は,年1回総会を開催し,今年度は第19回開催に向けて活動をしています。本研究会の主な目的は,IVRにおける看護の臨床実践能力を高めるための専門的な知識の習得,看護技術の研さん,チーム医療における看護師の役割の追求や,IVR看護師の専門性確立のための継続学習と人的交流の場の提供です。

 近年開催された研究会では,「IVR看護とイノベーション」をテーマに,迫り来るAI化の時代に私たちはどのような看護をめざすべきかの討論や,「IVR NurseのCareer Development」をテーマに,キャリアラダーの作成を試み公表するなどの活動を行いました。2017年度は「経験から学ぶIVR看護――未来に残すIVR看護の『知』」と題し,施設間を超えて共通する事例を取り上げ,参加者と共に考えました。

 参加者からは,「IVRでも看護ができることを知った」「IVRの看護が楽しくなった」との感想が,毎年数多く寄せられています。この気持ちや学びをぜひ職場と往還してほしいと考えています。

 IVRは治療の場でありながら意識のある患者とかかわる部門という特徴から,看護師はジレンマを感じるなど,毎日さまざまな経験をしているはずです。その経験を次の看護につなげるためには,内省を促せるような職場風土の醸成が必要です。自施設での看護の質を確認するためにも,IVR看護を発信し続ける当研究会に参加して研さんを積まれてはいかがでしょうか?

医学書院ウェブマガジン「かんかん!」にIVR看護師の事例と解説を連載しています。事例を通して,よりよいIVR看護を一緒に考えましょう。

参考文献・URL
1)野口純子.IVRに従事する看護師育成プログラム開発に関する基礎調査.日本看護学会論文集成人看護Ⅰ.2007;37:246-8.
2)野口純子.IVRにおける看護師育成のあり方について――局所麻酔下で侵襲的治療を受ける患者へのケアを意識した看護観の醸成に着目して.産業能率大学大学院修士論文.2018.
3)IVR看護研究会ウェブサイト.


のぐち・じゅんこ氏
1991年東京医大看護専門学校卒。東京医大病院でIVR看護経験を積み,2012年より現職。経営管理修士。IVR看護研究会常任幹事。共著に『IVR看護ナビゲーション』(医学書院)。