医学界新聞

寄稿

2018.05.21



【寄稿】

da Vinci手術の利点と課題
ロボット支援下手術を推進するには

絹笠 祐介(東京医科歯科大学大学院消化管外科学分野教授/同大医学部附属病院大腸・肛門外科診療科長)


 手術支援ロボットは,内視鏡下手術の低侵襲性に加え,①高画質3次元画像による視認性,②直感的な操作,③繊細で複雑な鉗子操作が可能であるといった利点から,新たな手術アプローチとして期待される。ロボット支援手術は米国を中心に世界中で導入され,特に泌尿器科,婦人科を中心に急速に普及し,最近,欧米では一般・消化器外科領域での増加が著しい。現在,手術支援ロボットの主流であるda Vinci Surgical System(ダ・ヴィンチ手術システム,Intuitive Surgical社)は,米国で1999年に販売が開始され,2017年12月末までに世界で4400台以上が導入された。ダ・ヴィンチ手術システムを用いた手術は,この7年間で約2倍の増加を来し,17年度の総手術件数は80万件を超えている。

 本邦では09年にダ・ヴィンチ手術システムが薬事承認され,大学病院を中心にロボットが導入された。12年4月より前立腺がんに対する全摘出手術が保険承認されたことにより国内においても急速に導入が進み,17年12月現在,約280台が稼働しており,5年前と比べると約5倍に増加している。18年4月からはこれまでの前立腺全摘,腎部分切除に加えて,新たに12術式()が保険適用となり,本邦でもますますの増加が期待される。

 2018年度診療報酬改定にて保険収載されたロボット支援下内視鏡手術

da Vinci手術の利点

利点❶人間の手首より広い可動域
 従来の腹腔鏡下手術における課題の1つである鉗子の可動性に関しては,ダ・ヴィンチ手術システムでは先端が人間の手指や手首の動きを模倣する7自由度の可動範囲を持つEndo Wristにより制限が軽減される(図1)。このEndo Wristの可動域は540度と人間の手首の可動域より広い。特に,男性の前立腺背側から肛門管近傍の剥離に関してや側方郭清においては,その利点が重要となってくる。

図1 人間の手首より広い540度の可動域を持つEndo Wrist(©Intuitive Surgical, Inc.)

利点❷鮮明な画像情報による空間認識
 3次元ハイビジョンカメラによる鮮明な画像情報が得られ,空間認識の点でも有利であり,腹腔鏡に不慣れな初心者においても,目的の位置に鉗子を容易に到達させることが可能となる。すなわち本システムは,開腹手術,腹腔鏡下手術双方の利点を取り入れた術式になり得ると期待できる。

利点❸縮尺機能と手振れ防止
 実際の手の動きよりも最大5分の1まで縮小して動かすことができる縮尺機能が備わっている上に,手振れ防止機能も有しているので,高画質拡大視野と相まって,腹腔鏡では操作が困難な骨盤深部においても非常に精緻な手術を行うことができる(図2)。

図2 最大5分の1ま

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