CQIモデルの開発で看護学教育の自律的改善を支援する(吉本照子,吉田澄恵,和住淑子,黒田久美子,野地有子,錢淑君)
寄稿
2018.04.23
【寄稿】
CQIモデルの開発で看護学教育の自律的改善を支援する
吉本 照子(千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター)
吉田 澄恵(東京医療保健大学千葉看護学部,前千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター)
和住 淑子(千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター)
黒田 久美子(千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター)
野地 有子(千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター)
錢 淑君(千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター)
千葉大大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター(以下,当センター)は,「看護学教育研究共同利用拠点」として,「教育―研究―実践をつなぐ組織変革型看護職育成支援プログラムの開発」(2010~14年度),「看護学教育におけるFDマザーマップの開発と大学間共同活用の促進」(2011~15年度)に取り組み,2016年度から「看護学教育の継続的質改善(Continuous Quality Improvement;CQI)モデル開発と活用推進」(~2019年度)に取り組んでいる。本稿ではCQIモデル開発の狙いと内容,および期待される効果と課題について述べる。
大学の多様な特性を踏まえたCQIモデルの開発を推進
CQIモデル開発と活用推進の大きな狙いは,各大学の自律的な教育の質改善を支援する点にある。
看護系大学(以下,大学)は1997年以降,各年5~16校増加し260校を超えた(2018年4月)。急増に伴い教員の流動性が高くなり,教育経験の少ない教員や多様な背景を持つ教員の増加,あるいは世代交代などにより多くの大学が教育組織の再構築を迫られ,看護学教育のCQIは喫緊の課題となっている。
社会に目を向けると,80歳以上の高齢者が今後急増し,要介護者の増加,ケアサービス利用者の医療ニーズの多様化・複合化および増大が予測される。ケアニーズの変化に即し,地域で人々のLife(生命・生活・人生)を支えるためには,看護職の量的確保のみならず,多様な専門性,ケアマネジメント力,専門職連携スキル,セルフマネジメント力などがこれまで以上に求められる。したがって看護基礎教育課程では,自律的な生涯学習者の基盤となる一定の看護実践力および自己教育力を習得する必要があり,看護学教育機関と保健医療福祉機関の連携による継続的な生涯学習支援が重要となる。
各大学において組織的な合意形成の困難も予測される中,当センターは大学の状況に応じた取り組みの手掛かりとなるようなCQIモデル開発と,活用推進に取り組むこととした。
CQIモデルでは,各大学の多様な特性を前提に,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシー(3P)の策定や見直し,教員の採用,ファカルティ・ディベロップメント(FD)の企画・実施・評価,地域連携,教育の質評価システムなどをどのように考え,実施するかを活動例とともに示したいと考え開発に当たっている。
そこで,大学の教育におけるCQIの実態解明,CQIモデルの開発と活用推進を段階的に進めている。大学の多様な状況に即して活用できるよう,当センターの事業による研修や各大学へのFD個別支援などを通じ,各大学の状況を把握しながら開発している。
全国調査から導かれたCQI実践の実態と課題
各大学の管理責任者およびCQI推進者に対するCQIの実態に関する全国調査(2017年実施)では,CQI活動として,教育の改善に焦点を当てたFD研修,在学生に対する個別の授業評価,実習機関・施設等へのヒアリングなどは90%以上実施されていることが明らかになった。一方で,卒業生によるカリキュラム・授業・教育環境等の評価(42.2%),卒業生の就職機関・施設等へのヒアリングや協議(62.7%...
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