医学界新聞

2018.04.23



2017年度保助看国家試験合格発表

看護師国家試験合格者は過去最多,5万8682人


 厚労省は3月26日,2017年度の第104回保健師国家試験,第101回助産師国家試験および第107回看護師国家試験の合格者を発表した。合格率は,保健師81.4%,助産師98.7%,看護師91.0%。看護師国家試験の合格率が90%台となったのは3年ぶりで,合格者数は過去最多の5万8682人だった。学校区分による合格状況を下記に示す。

写真左 受験番号を照合する受験者/写真右 自分の番号を見つけ笑顔の合格者たち=いずれも東京・厚労省にて

 採点除外等となった問題は,保健師国家試験で2問,助産師国家試験では3問,看護師国家試験では10問だった。うち,助産師国家試験の1問,看護師国家試験の7問は「必修問題としては妥当でないため」「受験者レベルでは難しすぎるため」と難易度が原因での採点除外となった(不正解の場合のみ)。

 保助看国試合格者数・合格率の推移

新出題基準が今回から適用,合格者はどう対策?

 合格発表会場の一つとなった東京・厚労省講堂には,受験者やその家族,学校関係者,病院関係者らが多数詰め掛けた。発表時刻の14時になると,会場のあちこちで喜びの声が上がり,自分の受験番号をスマートフォンで撮影したり,家族や教員に笑顔で合格を報告したりする姿が見られた。

 昨年4月に発表された「保健師助産師看護師国家試験出題基準平成30年版」(以下,新出題基準)が今回の国家試験より適用となった。本紙の取材に応じた看護師国家試験合格者は,「新出題基準で追加された内容を重点的に対策した」と自身の試験対策を振り返った。別の合格者は「必修問題では見たことのないタイプの出題が特に多かった」とした上で,「過去問演習の際,周辺知識の学習を心掛けたことが役立った」と語り,幅広い知識と思考力を問う出題傾向に合わせた対策の重要性がうかがえた。

第107回看護師国家試験の出題傾向分析

斉藤 由美(東京アカデミー東京校 講師)


必修問題:やや難化。新出題基準に基づく新規問題も出題

 新出題基準に含まれる「PM 4ワーク・ライフ・バランス」は難問であり,不正解の場合は採点除外となった。また関係法規・社会保障も新規問題が多数あり,難しく感じただろう。「臨床検査値の評価」も新出題基準に含まれていたが,検査値ではなく検査項目に関して出題された。学生の苦手意識の強い薬剤関連の出題は増加した。「PM 21ジギタリスの副作用」は徐脈でなく悪心を選ばせるなど,過去問とは違いが見られた。「PM 12潰瘍性大腸炎」の症状を問う問題は従来の必修問題レベルを大きく超えており,不正解の場合は採点除外となったが,今後はこのような出題にも備えたほうがよい。解剖・生理は,設問の難易度は従来通りであったが,選択肢が難化した。環境問題,国民健康・栄養調査,国民生活基礎調査は例年通り今回も出題された。

一般問題:視覚問題が増加。従来とは異なる問われ方も

 新出題基準に従い,視覚素材を用いた問題が増加した。解剖・生理の「PM 26味覚」「PM 27ビタミンの作用」「PM 74過換気」「PM 83健常な成人の心臓」のように,出題テーマ自体は新しくないが問われ方が過去問とは違うものは難しく感じたと思われる。薬剤の「PM 29薬剤と副作用」「PM 43インスリン製剤」,母性の「AM 69着床時に増加するホルモン」「PM 56閉経」,小児の「AM 52免疫グロブリンの変化」,精神の「AM 49レビー小体型認知症」「PM 80前頭側頭型認知症」も同様である。過去問にとらわれず,より深く学習して知識を習得する必要がある。第106回からの傾向であるが,整形外科分野からの出題が増えている。また,第106回同様に3~5行ほどの臨床的問題が複数問出題された。関係法規・公衆衛生は難化し,出題数も増えた。「AM 43難病の医療費助成」「AM 48高齢者世帯の状況」「AM 64医療保険制度」「AM 65医療提供施設」「AM 79育児・介護休業法」「PM 51子どもの権利」「PM 62健康保険法による訪問看護」「PM 76感染症の届出期間」などは特に正答率がよくなかった(東京アカデミーの独自調査による分析)。これらは過去問になく,保健師養成課程を履修した受験生には有利であったと思われる。今後は看護師養成課程だけの受験生も幅広く学習しておく必要がある。

状況設定問題:実習中の学習で「思考力」「アセスメント力」の強化を

 第106回同様AM,PM各11症例で,読解力と正確な知識が求められた。臨床検査データの基準値を正しく暗記して異常を見分ける力をつけること,多くの症例を知ることが必要である。「AM 97上腕骨近位部骨折の骨折部固定法」「AM 117胎児心拍数陣痛図」などが新規に出題された。また,例年は閉塞性肺疾患が出題されるが,今回は「PM 91肺線維症」が出題された。新出題基準では紫斑病としてTTPとITPが含まれていたが,「PM 103ヘノッホ・シェーンライン紫斑病」が出題された。したがって,出題基準に明記されていなくても関連する疾患は幅広く学習していく必要がある。

 近年の傾向として,臨床現場寄りの出題が増加し,実習中の学習が大切になってきており,この傾向は今後も続くだろう。実習前に基礎知識を十分に習得し,実習中はその知識を元に疾患を学び,看護師としてその患者に何をすべきか,「思考力」「アセスメント力」を習得することが必要である。低学年からの教育がますます重要である。

 新出題基準の適用は今回からだが,昨年から既に新出題基準に沿う出題もされており,傾向は変わっていない。過去問を中心に学習した学生は正答率が低迷し,思考力のある学生は高正答率であった。さまざまな知識を関連付ける力を養うことが重要だ。

■2017年度保助看国家試験合格者状況

第104回保健師国家試験合格状況

第101回助産師国家試験合格状況

第107回看護師国家試験合格状況