医学界新聞

2018.04.16



金原一郎記念医学医療振興財団助成金


第2回生体の科学賞授賞式

野田昌晴氏
 第2回生体の科学賞授賞式が3月9日,医学書院(東京都文京区)にて行われた。本賞は金原一郎記念医学医療振興財団の基金をもとに,2016年度に創設。基礎医学医療研究領域における独自性と発展性のあるテーマに対して,研究費用全般への支援を目的に,1件500万円の助成を行うものである。今回は,野田昌晴氏(自然科学研究機構基礎生物学研究所)による「食塩感受性高血圧発症の脳内機構の解明」が受賞した。

 食塩の過剰摂取が高血圧発症につながることはよく知られているが,そのメカニズムは完全にはわかっていない。野田氏らはこれまでに,脳内ナトリウムイオン(Na)濃度のセンサーとしてNaチャネルの一つ,Naxを同定した。Naxを欠損したマウスでは,体液中のNa濃度変化が検知できず,水分や塩分の摂取制御に異常を来す。氏は,Naxからの情報が交感神経活動の活性化を通して高血圧発症にかかわるとのデータを得ており,今後はNaxが感知したNa濃度変化が交感神経活動増加をもたらす神経機構の解明をめざすという。

 同財団理事長の野々村禎昭氏(東大名誉教授)は,「中枢神経の基礎科学を長年追究してきた点を評価した。今後の成果に期待したい」と講評した。受賞のあいさつに立った野田氏は,「今回の受賞は大変な名誉であり,身の引き締まる思いだ。これからますます研究に精進したい」と語った。

第63回認定証(研究交流助成金,留学生受入助成金,研究出版助成金)贈呈式

 金原一郎記念医学医療振興財団は3月9日,医学書院にて第63回認定証贈呈式を開催した。同財団は基礎医学の振興を目的に,年に2回,助成金を交付している。下期である今回は,海外で行われる基礎医学医療に関する学会等への出席を助成する研究交流助成金,基礎医学医療研究を目的に日本へ留学する大学院生等を助成する留学生受入助成金,基礎医学医療研究成果の公表を目的とする自費出版を助成する研究出版助成金が交付された。今回の助成対象者は27人で,贈呈式には対象者を代表して一戸猛志氏(東大医科研),西山郵子氏(国立がん研究センター研究所)が出席した。

 開会に際し,金原優同財団常務理事(医学書院代表取締役会長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された同財団の概要を紹介。「この受賞を機にさらに研究を進めて,基礎医学の発展に寄与してもらいたい」と語った。

 交付対象者を代表して一戸氏があいさつに立った。氏は,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスに関する研究成果を,6月にイタリアで開かれるNegative Strand Virus meetingで発表する。SFTSウイルスはマダニにより媒介され,国内でも近年,西日本を中心に感染者が確認され,死亡例もある。氏は,「海外での口頭発表や質疑応答は私のような若手研究者にとって貴重な機会。今回のミーティングでウイルス学研究の最新の研究成果を学んできたい」と抱負を述べた。

*同財団助成金の詳細については,同財団助成事業募集要項を参照されたい。


●金原一郎記念医学医療振興財団

第32回研究交流助成金・留学生受入助成金,第31回研究出版助成金交付対象者

No. 氏名 所属機関(略称) 助成対象
1 赤羽 朋博 東女医大

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