医学界新聞

2017.12.18



Medical Library 書評・新刊案内


そのとき理学療法士はこう考える
事例で学ぶ臨床プロセスの導きかた

藤野 雄次 編
松田 雅弘,畠 昌史,田屋 雅信 編集協力

《評者》諸橋 勇(いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部部長)

先輩理学療法士の経験値や臨床感を言語化した指南書

 本書の帯に書いてあるように,「根拠はわかった。理論も学んだ」,そして先輩の行っていることを毎日見ていても,臨床においてうまく理学療法を行えていない理学療法士(以下,PT)は多いと思います。そこで“根拠や理論を得ることと同時に必要なことは何か”という問いが出てきます。昔から理学療法はサイエンスの部分とアートの部分があると言われてきました。近年は前者が強調され,先輩PTの経験値が後輩に伝承されているとは言い難い状況にあります。

 理学療法は情報収集,問題点抽出,統合と解釈,目標設定,治療計画の立案・実行,検証の一連のプロセスで進められます。この中には経験値から導き出された「勘」「コツ」「知恵」などがたくさん含まれています。そして,このような経験値,臨床感の部分が言葉や文章にされることが少ない印象です。「なぜ,あのPTはあんな運動療法の展開ができるのだろうか」「頭の中でどのようなことを考えているのだろうか」と思った経験は誰にでもあります。そんな疑問に答えようと出版されたのが本書なのだと思います。

 本書は,第1章ではPTの在り方に触れ,第2章では思考過程でもあるクリニカルリーズニングの要点が述べられ,第3章ではリスク管理,第4章では中枢神経疾患,運動器疾患,内部障害,神経筋疾患などの評価について,第5章では多くのPT...

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