金原一郎記念医学医療振興財団
2017.11.20
金原一郎記念医学医療振興財団
第62回認定証(第32回基礎医学医療研究助成金)贈呈式開催
金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=東大名誉教授・野々村禎昭氏)は,このほど「第32回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者として70人(助成総額3970万円)を選出。10月20日に,医学書院(東京都文京区)にて第62回認定証贈呈式が開催された。
開催に際して,金原優同財団業務執行理事(医学書院代表取締役社長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された同財団の概要を紹介した。選出された交付対象者をたたえ,「この助成をきっかけにさらに良い研究に結び付け,研究者としてさらなる飛躍をめざしてほしい」と激励の言葉を述べた。
認定証贈呈の後,同財団理事長で選考委員長を務める野々村氏が,359人の応募があった今回の選考経過について説明した。氏は「基礎的研究への研究費は減少傾向にあり苦しい状況ではあるが,研究をやり遂げて日本の医学界を引っ張っていくリーダーとなってほしい」と期待を寄せた。
続いて交付対象者を代表して合山進氏(東大医科学研究所准教授・助成対象「RUNX1-CBFB結合阻害剤の開発」)があいさつに立った。RUNX1は血液細胞の発生・分化を制御する転写因子であり,白血病の発症などに関与するとされる。氏は10年以上にわたりRUNX1の生理機能や生化学的性質を研究し,さまざまな疾患の治療標的となる可能性を示してきた。今後,実際に阻害剤を開発することで臨床への応用をめざす。氏は,転写因子の阻害剤は,酵素の阻害剤と比べ一般的に開発が難しいとした上で,「さまざまな技術革新が進み,転写因子の阻害剤を当たり前に開発できる時代が到来しつつあると感じている。本研究をその第一歩にしたい」と抱負を語った。
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写真 贈呈式には,70人の交付対象者のうち,東京近郊の8人が出席した。 |
金原一郎記念医学医療振興財団
第32回基礎医学医療研究助成金交付対象者
No. | 氏名 | 所属機関(略称) | 助成対象 |
1 | 新井 康之 | 京大/血液・腫瘍内科学 | STAT1機能獲得型変異による慢性粘膜皮膚カンジダ症に対する、CRISPRシステムを用いた新規治療開発 |
2 | 池田 直廉 | 阪医大/脳神経外科学教室 | 中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)腫瘍細胞及び周辺組織におけるPD-L1,L2の発現の解析 |
3 | 石黒 啓一郎 | 熊大発生研/染色体制御分野 | 減数分裂誘導のメカニズムに関する研究 |
4 | 石本 崇胤 | 熊大/生命科学/消化器外科学 | 胃癌間質ニッチとクロストークを介した癌幹細胞性維持機構の解明 |
5 | 稲垣 毅 | 群大生体研/代謝エピジェネティクス分野 | 代謝物によって制御される細胞記憶の基礎医学研究 |
6 | 井上 泰輝 | 熊大/生命科学/神経内科学分野 | プロテオミクスを駆使した脳アミロイドアンギオパチーの病態解析および、新規進行抑制因子の探求 |
7 | 井上 靖道 | 名市大/薬/細胞情報学分野 | メチルトランスフェラーゼSET8によるTGF-βシグナル制御を介したがん悪性化メカニズムの解明 |
8 | 宇仁 暢大 | 東大病院/輸血部 | 骨髄系腫瘍の病態形成における炎症性サイトカインの役割の解明と新規治療法の開発 |
9 | 梅本 晃正 | 熊大/国際先端医学/須田研究室 | プリン代謝物による造血幹細胞の静止期維持機構 |
10 | 江川 潔 | 北大/小児科学教室 | 自閉症スペクトラム、アンジェルマン症候群患者iPS細胞を用いた病態解析 |
11 | 榎木 亮介 | 北大/光バイオイメージング分野 | 概日時計中枢における神経-グリア機能連関の解明:光計測と微細加工における融合アプローチ |
12 | 遠藤 俊毅 | 東北大/神経外科学分野 | 脊髄損傷モデルに対するヒトMuse細胞の亜急性移植の効果 |
13 | 大塚 翔 | 千大/フロンティア医工学センター | 隠れた難聴の他覚的診断手法の確立 |
14 | 大畑 樹也 | 浜松医大/分子生物学講座 | LncRNAのタンパク結合ドメインを同定する新手法shrimps法の開発 |
15 | 大東 いずみ | 徳大/先端酵素研/免疫系発生学分野 | ヒトbeta5t多型が免疫機能に及ぼす影響について |
16 | 岡村 大治 | 近畿大/農学/バイオサイエンス学科 動物分子遺伝学 | 細胞系譜の二元性による細胞の不死化機構の解明 |
17 | 岡村 裕彦 | 岡大/口腔形態学分野 | 糖尿病重症化における歯周病原菌由来の細胞外分泌小胞の役割~微生物と細胞の新たなコミニケーションツール~ |
18 | 金蔵 孝介 | 東医大/分子病理学分野 | RNAの液体液体相転移を標的とした神経変性疾患治療法開発 |
19 | 金 玟秀 | 京大/細胞機能制御学 | ユビキチンの翻訳後修飾が腸管病原細菌感染において果たす役割の解明 |
20 | 合山 進 | 東大医科研/先端医療研究センター 細胞療法分野 | RUNX1-CBFB結合阻害剤の開発 |
21 | 古株 彰一郎 | 九州歯大/歯/健康増進学講座 分情報生化学分野 | 骨格筋うまみ受容体をターゲットにしたサルコペニア予防法の分子基盤 |
22 | 古道 一樹 | 慶大/小児科学教室 | 新たな右心不全治療法のためのiPS細胞を用いた右心室心筋分化誘導法の開発 |
23 | 後藤 裕樹 | 熊大/エイズ研センター 岡田プロジェクト研究室 | 造血器腫瘍におけるがん抑制遺伝子Pax5を標的とした治療法の開発 |
24 | 小林 篤史 | 北大/獣医/比較病理学教室 | プリオン蛋白GPIアンカーのシアル化が遺伝性プリオン病を引き起こすのか? |
25 | 小林 純子 | 北大/解剖学講座 組織細胞学教室 | 黄体はなぜ自発的に退行するのか?~糖鎖に着目した黄体の機能制御メカニズムの解明 |
26 | 小林 恭 | 京大/外科系器官外科学講座 泌尿器科学分野 | 去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)患者由来ゼノグラフトを用いたアンドロゲン受容体(AR)による遺伝子発現プログラムの解明 |
27 | 小山 博之 | 名市大/消化器・代謝内科学 | 摂取脂肪酸バランスによる摂食調節ホルモンの分泌・作用の制御メカニズムの解明 |
28 | 坂本 毅治 | 東大医科研/人癌病因遺伝子分野 | 腫瘍関連マクロファージ分極化の新規メカニズムの解明 |
29 | 佐竹 智子 | 横市大/分子細胞医科学 | 後天性小頭症の発症機序を細胞・分子レベルで解明する方法の開発 |
30 | 佐藤 慎太郎 | 阪大/微生物病研/BIKEN次世代ワクチン協働研究所 粘膜ワクチンプロジェクト | 経口免疫寛容誘導における、抗原取り込み特化上皮細胞の寄与 |
31 | 佐藤 哲也 | 九大生体研/生体多階層システム研究センター | 染色体高次構造情報を利用した疾患原因遺伝子が不明なSNPsに対する新規アプローチ |
32 | 七田 崇 | 都医総研/脳卒中ルネサンスプロジェクト | 脳組織損傷後の神経修復メカニズムの解明 |
33 | 渋谷 周作 | 山口大/共同獣医学/病態制御学講座 獣医衛生学分野 | リソソーム阻害剤によるmechanistic target of rapamycin complex 1(mTORC1)抑制作用 |
34 | 嶋村 美加 | 長大/原爆後遺障害研/分子医学研究分野 | 新規マウスモデルを用いた甲状腺癌の発生・転移の研究 |
35 | 清水 尚子 | 近大/東洋医学研/分子脳科学研究部門 | オリゴデンドロサイトにおける統合失調症関連因子の機能解析 |
36 | 志馬 寛明 | 名市大/免疫学分野 | 紫外線照射による免疫抑制誘導機構の解明 |
37 | 下川 周子 | 群大/国際寄生虫病学分野 | 寄生虫感染で誘導された新規制御生T細胞は自己免疫疾患を抑制する |
38 | 白上 洋平 | 岐大/分子・構造学講座 病態情報解析医学分野 | 新規肝内胆管癌マウスモデルの樹立と発癌メカニズムの解析 |
39 | 新谷 泰範 | 阪大/生命機能研究科 医化学教室 | チトクロムオキシダーゼ(COX)をターゲットとする新規抗菌剤の開発 |
40 | 鈴木 志穂 | 東医歯大/細菌感染制御学分野 |
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