医学界新聞

2017.11.13



第23回白壁賞,第42回村上記念「胃と腸」賞授賞式


 第23回白壁賞および第42回村上記念「胃と腸」賞の授賞式が9月20日,笹川記念会館(東京都港区)で開催された早期胃癌研究会の席上にて行われた。第23回白壁賞を受賞したのは,蔵原晃一氏(松山赤十字病院胃腸センター)ほか「狭窄を来す小腸疾患の診断――X線診断の立場から」[胃と腸.2016;51(13):1661-74.]。また,第42回村上記念「胃と腸」賞は,前畠裕司氏(九大大学院医学研究院病態機能内科学)ほか「家族性大腸腺腫症に伴う十二指腸腺腫の取り扱い」[胃と腸.2016;51(12):1593-1601.]に贈られた。当日は選考委員の鶴田修氏(久留米大病院消化器病センター)から両賞の選考経過の説明と,お祝いの言葉が述べられた。

蔵原晃一氏 前畠裕司氏

狭窄を合併した小腸疾患の診断におけるX線診断の有用性を説く

 白壁賞は,故・白壁彦夫氏の業績をたたえ,「消化管の形態診断学の進歩・普及に貢献した研究」に贈られる。蔵原氏らの論文は,狭窄を来した小腸疾患を炎症性/腫瘍性に分類し,過去の報告と自験例に基づいて,そのX線学的特徴と鑑別診断を概説したもの。小腸狭窄合併例に対する内視鏡的アプローチには限界があるなかで,全体像の把握や質的診断には小腸X線造影検査の併用が有用であると結論付けた。蔵原氏は受賞のあいさつで,「このたびの受賞は“もっと頑張れ”という激励として受けとめており,今後も一例一例丁寧な診療を心掛け,形態診断学の発展に貢献したい」と抱負を述べた。

FAPに伴う十二指腸病変を詳細かつ長期にわたり検討

 村上記念「胃と腸」賞は,故・村上忠重氏の業績をたたえ,「消化管疾患の病態解明に寄与した研究」に贈られる。前畠氏らの論文は,家族性大腸腺腫症(FAP)40例を対象に,乳頭部腺腫と十二指腸腺腫症の内視鏡所見および病理組織像の経時的推移(中央値12.7年)を検討したもの。長期間の観察で,FAPにおける十二指腸腺腫の進行は緩徐,かつ癌化はまれであったことから,予防的十二指腸切除術は推奨できないとの見解を示した。前畠氏は受賞のあいさつで,「今回の受賞は,一症例を大事にする研究室の伝統と成果が評価されたものであり,FAP患者の診療・検査に携わってこられた多くの先生方のおかげ」と受賞の喜びを語った。

 なお,両賞は次回より統合され,“「胃と腸」賞”として新たに発足する。

*授賞式の模様は「胃と腸」誌(第52巻12号)にも掲載されます。

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