医学生は医学教育をどう見ているか(河野絵理子)
寄稿
2017.11.13
【視点】
医学生は医学教育をどう見ているか
河野 絵理子(全日本医学生自治会連合 第34期中央執行委員長)
全日本医学生自治会連合(医学連)が2015年に行った「新専門医制度に対する医学生の意識調査アンケート」1)では,多くの医学生がキャリア形成に不安を抱いていることが明らかになりました。これを受け行った日本専門医機構との懇談では,「新専門医制度は学生が“どんな医師になりたいか”を起点としてこその制度である」との認識を機構側と共有しました。
そこで医学連では2016年12月,医学生の声を大学教育や新専門医制度に生かすことを目的に,「目指す医師・医学者像についての意識調査アンケート」2)を実施しました。全国70医学部の学生4129人から得たアンケート結果の概要を紹介します。
キャリア形成を考える機会や新専門医制度への理解は不十分
「目指す医師・医学者像を考える機会を十分に得られていると感じるか」の問いには, 43%の学生が「不十分/やや不十分」と回答し,その原因には,考える時間的余裕やロールモデルの不足などが挙がりました。「今の医学教育により,自身が目指す医師・医学者像に近づけると思うか」という項目では,41%が「まったく近づけない/近づけない」と答え,「具体的に何を身につければいいか見えてこない」「テストに受かる勉強しかしていない」などの意見がありました。
「新専門医制度の議論に学生の声をもっと反映させることが必要か」には,45%が「必要だと思う」と答えました。一方,「どちらでもない」との回答も約4割に上りました。そうした回答の理由としては「意見の反映よりも制度に関する知識がほしい」「制度内容が二転三転しよくわからないため意見の出しようがない」などが多く挙がりました。
本調査結果から,医学生は現在の医学教育に一定の満足度を示してはいるものの,キャリア形成を考える機会の不足を感じている学生も多いことがわかりました。こうした不安の解消には,過密なカリキュラムの見直しや,多様なキャリアパスの提示などが必要ではないでしょうか。
この10月には新専門医制度の下での専攻医登録が始まりましたが,将来当事者となる医学生自身,制度を十分に理解できているとは言い難い状況です。日本専門医機構には,新専門医制度の学生への周知を引き続き求めます。各大学においては,大学側と学生側が協働してキャリア形成を考える機会や相談体制を整備し,個別性の高い学生の意見を吸い上げる仕組みが必要でしょう。目指すべき医師・医学者像や研修の積み方について学生が主体的に考え,将来の医療を担っていく意識を養える医学教育の形を探るべきだと思います。
◆参考文献・URL
1)医学連.「新専門医制度に対する医学生の意識調査アンケート」結果.2016.
2)医学連.「目指す医師・医学者像についての意識調査アンケート」結果.2017.
こうの・えりこ氏
信州大医学部医学科4年在学中。2017年8月に行われた第60回全国医学生ゼミナールin宮崎では全国実行委員長を務めた。
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