医学界新聞

インタビュー

2017.10.09



【interview】

自信を持って当直に臨みたい君に
坂本 壮氏(順天堂大学医学部附属練馬病院救急・集中治療科/西伊豆健育会病院内科)に聞く


 将来いずれの科に進むにしても,当直は研修医なら誰もが通る道だ。限られた医療スタッフのもと迅速・適切な対応を求められ,判断に迷ったり,予想外の経過に冷や汗をかいたりすることもあるだろう。そんな経験から,当直に苦手意識を持っていないだろうか。救急医としての経験をもとに『ビビらず当直できる内科救急のオキテ』(医学書院)を執筆した坂本壮氏に,当直の何が難しいのか,何を心掛けるべきかを聞いた。


――坂本先生の普段の当直の状況について教えてください。

坂本 順天堂練馬病院では月に5~8回ほど当直しています。3人の研修医と一緒に,一晩で十数台の救急車で来院する患者を受け入れながら,入院患者の急変にも対応します。また,非常勤の西伊豆健育会病院でも月に数回勤務しています。

――救急外来ではどんな患者さんが多いのでしょう。

坂本 近隣に救命救急センターが存在しないため,3次救急の患者も来院しますが,内科疾患が原因の2次救急患者が最も多いです。内科疾患への対応は救急の基本ですから,研修医の皆さんにはしっかりと学んでおいてほしいですね。

Commonな疾患の非典型例を見逃すな!

――坂本先生は当直に慣れないころ,どんな気持ちでしたか。

坂本 当初は不安でいっぱいでした。卒後3年目,救急・集中治療科に入局して半年後からひとり当直を任されるようになり,責任の重さを感じました。

 夜間の救急外来では日中に比べて,緊急度が高い患者さんや,初めて診る患者さんが多いです。そのぶん,対応に迷う場合や処置に1分1秒を争う場合が多く,不安も大きかったです。

――どうやって自信をつけていったのでしょう。

坂本 出合う頻度の高い症候の鑑別と対応を徹底的に学びました。“Common is common”です。例えば呼吸困難の高齢患者だったら,肺,心臓,神経,精神などについて疑わしい疾患を考えていきます。肺なら肺炎や肺血栓塞栓症,心臓なら心不全や不整脈などと鑑別がすぐに挙げられるようになると自信がついてきます。

――よく出合う症候への対応を学ぶ上で気を付けるべきことは何ですか。

坂本 当直医が一番心配するのは「重篤な疾患の見逃し」です。見逃しは,珍しい病気だけでなく,虫垂炎や心筋梗塞などcommonな疾患でも起こり得ることに注意すべきです。

 例えば,胸痛は心筋梗塞の典型症状ですが,実は糖尿病の高齢女性などでは痛みがほとんど出ないことがあります。この場合,胸痛ではなく呼吸困難や脱力,失神,冷や汗,めまいなどを主訴に来院します。こうした非典型例については知識として頭に入れるだけでなく,日ごろから意識していないと見逃しにつながってしまいます。

 Commonな疾患については,さまざまな入口から想起できるようにしておくべきです。

病歴・身体所見から確定診断をめざそう

――非典型例も含めるとさまざまな疾患が考えられ,取るべき対応に迷ってしまいそうです。

坂本 確かに難しいところです。迷ったときに研修医はつい検査に走ってしまいがちです。そして結果が陰性だと「怖い疾患は否定的」としてホッとしてしまいます。ところがそれでは患者さんの安心には不十分なんです。

――どういうことですか。

坂本 例えば胸痛を主訴とする患者さんを考えてみてください。心筋梗塞を疑って急いで心電図をとったけれど,典型的な所見がなかったとします。「怖い病気ではなさそうですね。今日はいったん帰ってください」と...

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