医学界新聞

2017.09.25



環境変化に応じた看護学教育を

第27回日本看護学教育学会開催


 日本看護学教育学会第27回学術集会(会長=沖縄県立看護大・嘉手苅英子氏)が8月17~18日,沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)にて,「温故知新が照らす看護学教育」をテーマに開催された。本紙では,今後の看護学教育の在り方について議論された2つのシンポジウムの様子を報告する。


看護技術習得に有効なシミュレーション教育

嘉手苅英子会長
 臨地実習で学生が実践できる看護技術は,倫理的配慮などにより制約がある。その中で看護実践力をより向上させるために,教育現場ではどのような工夫ができるか。シンポジウム「看護技術教育の変化と本質」(座長=熊本大大学院・前田ひとみ氏,京都学園大・西田直子氏)では,看護技術の本質は何かをとらえ,今後の看護技術教育の充実に向けた議論が展開された。

 看護学教育の最大の目的は看護実践力の習得であり,看護学教育での技術教育は実習の前段階に位置付けられる。山本利江氏(千葉大大学院)は基礎教育の立場から,車いすからベッドへの移動失敗時の授業場面を振り返りながら看護技術の習得過程を解説した。学習者による行為のポイントの自覚,教材を使用した鮮明な像の形成とその納得感が成功時の達成感を高め,学習者の主体性を喚起できるとした。確かな技術の習得には失敗を学びにつなげる過程が重要で,指導者が看護技術の要点に精通している度合いが大きな要因になると分析した。

 続いて,急性期病院で現任教育を行う伊藤智美氏(浦添総合病院)が登壇し,現場の取り組みを紹介した。2010年度診療報酬改定で新設された急性期看護補助体制加算などによる他職種との分担で,看護師による基礎的な看護技術の場の減少と指導力の低下,技術不足による医療事故増加の懸念が生じているという。そこで,侵襲性の高い看護技術はシミュレーション教育に加え,リフレクションを促す指導力の向上のために,看護師を基礎教育の演習指導に参加させる取り組みを導入。今後成果を上げていくには教育現場と臨床の協働が重要との見解を示した。

 阿部幸恵氏(東医大)は看護技術教育の有効な手法としてのシミュレーション教育を総括。臨床現場を模擬的に再現し,学習者が問題発見,解決した経験を仲間とともに振り返ることで,知識と技術の統合が図られると解説した。シミュレーション教育では状況に合わせたアセスメントのもと,個々の技術を実践していく。氏は特に,「正確な観察の習慣を付けることが重要」とし,基礎的な看護技術について看護師全員の技術の認定・質保証ができるシステムの構築を呼び掛けた。

今後も増加する社会人経験者への効果的な支援と教育とは

シンポジウムの模様
 厚労省は,2013年に157万人だった看護職員は,2025年に196~206万人必要と予想している。医療ニーズの増大やケアの多様化で看護職員への期待が高まる一方で,日本の18歳人口の減少傾向は続く。シンポジウム「社会人経験を有する看護学生の特性を活かした教育」(座長=日本看護学校協議会・池西静江氏,前那覇看護専門学校・垣花美智江氏)では,こうした背

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